中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

きずなHDを買った理由②・・葬儀業界について

前方後円墳のイラスト

前回の記事の反応が良くて嬉しい。

twitterのフォロワーさんも増えて励みにもなった。

気分良く続きを書きます。

 

今回は葬儀業界の特徴について書きます。

 

 

1.葬儀の特徴について

葬儀業界の特徴を箇条書きでまとめてみた。

 

① 宗教がからむ

葬儀といえばお坊さんが読経するイメージがある。

日本において無宗教で執り行われる葬儀の割合は10.7%、というデータがある。9割弱の葬儀には宗教が絡むわけだ。また葬儀でのお布施が収入の柱だという寺院も多い。

 

「結婚式をキリスト教式で挙げるのは平気だけど、キリスト教式で葬儀を挙げられるのはちょっと・・」

このセリフに共感できる人は多いだろう。葬儀については他のサービスより選択が保守的になる傾向がある。

 

② 地域性が強い

結婚式をハワイで行う人はいても葬儀をハワイで行う人はいない。東京の有名なホテルで結婚式を上げたがる若者はいるが、京都の金閣寺で葬式を挙げることを夢見る人はいないだろう。

ナマモノである遺体を運ぶのはなかなか大変だし、参列者の移動も大変だ。

その結果、葬儀は近所で行うことになる。県を跨ぐことすらほとんどないだろう。

 

③ 地域差が大きい

葬儀の風習は地域によって激しく違う。

 

他県の葬式に参加するとカルチャーショックを受けるはずだ。

私も北海道のある地域で葬儀に参加し、受付で香典の中身を確認されて領収書を貰って結構驚いた経験がある。香典に領収書!

でもその土地ではそれが普通だった。

 

この地域差が参入障壁として働く。土地の風習を知らない業者は、その土地では葬儀を執り行えない。

 

④ 家族経営の企業が多い

本当に小さな町でも葬儀屋は存在する。それぞれの土地に根付いた零細葬儀社が多い。社員数名の町工場のような葬儀会社が津々浦々に多数ある。家族経営プラスアルファ、くらいの規模で営業している。

そんな零細企業の例に漏れず、後継者がいなくて廃業する事も多い。

 

⑤ 24時間対応が必要

人が亡くなるのはほとんど病院だ。

医師が死亡確認を行うと、遺族は葬儀屋に電話をかける。電話をかけて1時間もしないうちに葬儀屋はやってくる。そしてご遺体を引き取っていく。

これは24時間、365日いつでも同じ流れだ。

葬儀業はなかなか大変な仕事だ。だから人材確保は困難になる。

また、息子が家業を継がない葬儀屋があるのも無理はない。

 

⑥ 何度も利用する人は少ない

人が亡くなるのは一度きりだ。

家族の葬式を何度か出すことはあっても、生涯10回喪主をやりましたという人はごく少数だろう。

その結果、業者と消費者の経験値の差が大きくなる。年に50回の葬儀を行う業者と、一生で数回の経験しかない消費者。この差は一般的なサービス業よりずっと大きくなる。

その結果、業者側がその気になればボッタクリも可能になる。

 

⑦ 消費者側に選択のための時間がない

結婚式なら1年ほどかけて準備することができる。式場やドレスや料理を選び、呼ぶ人を決めて席順を決めて・・と大変だが、色々比較して悩む時間がある。

一方、葬儀はすぐに行う必要がある。いつまででも遺体をそのままにしておく事はできない。死亡確認が終わったらすぐに業者に電話しなくてはいけない。

これも不透明な会計とボッタクリを可能にする余地を増やす。

 

しかし終活意識の高まりによって事前に準備を行う人が増えてきた。また、スマホの普及によってその場での価格比較ができるようになり、葬儀業者のボッタクリも減少してきているとの事だ。

 

⑧ 失敗は許されない

「火葬した遺骨なんですが、ちょっと手違いがあって無くしてしまいました(笑)」

 

そこまで極端な事はないだろうけど、基本的に葬儀の失敗は許されない。悪評が立った葬儀会社が地域で営業を続けるのは不可能だろう。

葬儀業の社員には高いプロ意識が必要だ。つまり優秀な人材が必要な業界なんだ。

人材確保が難しいのは間違いないだろう。

 

 

2.葬儀市場の歴史と現状

そもそも葬儀は地域共同体が行うものであり、業者が行うものではなかった。

葬儀業者は多くなく、葬儀市場というものはほとんど存在していなかった。

 

地域共同体の力が弱くなってきた1970年頃、葬儀サービス会社が各地で創業され葬儀市場が生まれた。

 

現在の葬儀市場は1兆5千億円だ。しかし市場は成熟しておらず、高シェアを占める企業は存在しない。

 

日本最大手の葬儀業者は大阪を地盤とした(株)ベルコだが、その売上高は446億円。つまりシェアは3.0%程度だ。

上位10社を全部合わせても16%程度にしかならない。

 

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葬儀業界の最新M&A動向 | 山田コンサルティンググループ (ycg-advisory.jp)

 

葬儀業界に存在する様々な参入障壁のため、葬儀業界はまだ覇者が存在しない。

 

 

3.きずなHDの成長のためには

きずなHDをとりまく葬儀業界はなかなか複雑なようだ。

その複雑な状況の中で、きずなHDは成長できると判断して株を買った。

きずなHDにとってのチャンスと脅威に分けて箇条書きにしてみた。

 

チャンス

・業界のリーダーとなるような企業が存在しない

・零細葬儀会社の廃業が進んでいる

 

脅威

・葬儀の単価が減少している

・地域性という参入障壁が存在する

・消費者側の終活意識が高まっている

・優秀な人材が必要だが人材確保が難しい

 

成長のためにはこれらのチャンスを活かし脅威を除いていく戦略が必要になる。

 

 

きずなHDの2020年5月度の売上は7,676百万円。これは葬儀業のシェア上位10社にすら入っていない。そして純利益は210百万円に過ぎない。

それがいつか売上500億円、純利益25億円くらいの業界トップになるポテンシャルはある。私はそう考えている。何年かかるかは知らない。

 

 なぜそう考えたのか。それについて次回書きます。 

 

 

 

投資家として人生の最後を考えるならこれは必読。

お金はあの世に持っていけない。持っていけるのは思い出だけ。

「ゼロで死ね」

ロックなタイトルもいい。