中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

アズームを買った理由③ 駐車場の借り手を見つける

車好きのイラスト(女性)

1.マッチングサービス事業

ビジネスを分析するときは「お金を払うのは誰か」という事を十分考えなくてはいけない。アズームのビジネスについては簡単だ。駐車場を借りるひとが月額でお金を払う。

借りる人がいなければアズームが借り上げた駐車場は賃料を支払う一方になる。それでは赤字なので、借り手を見つけてくる必要がある。

借り手を見つけるためにやっているのがアズームのマッチングサービス事業だ。

 

アズームは「Car Parking」という月極駐車場検索サイトを運営している。

駐車場を借りたい人がこのサイトで検索する。アズーム側が借り手にちょうどいい駐車場を提案し、契約する。その際、駐車場料金1ヶ月分のお金を紹介料として受け取る。

これがアズームのマッチングサービス事業のビジネスだ。マッチングサービス事業は、アズームの売上の10%程度を占めている。

 

このサイトが掲載している月極駐車場の総数は、2020年7月5日現在で41,269件。一方アズームが受託しているサブリース駐車場は、2020年2Q時点で10,551件。後述するが、サブリース駐車場の稼働率は90%程度なので、空いている駐車場は10%となる。計算すると、アズームの自社物件は1,055件しか掲載されていない事になる。これはサイトが掲載している駐車場の2.6%に過ぎない。

マッチングサービス事業が仲介しているのは、ほとんどが他社物件という事だ。

 

一方、駐車場マッチングサービスはかなり人手がかかるビジネスらしい。ひとりひとりのお客に、場所や駐車場のタイプや期間などを確認し、契約を結ぶことでようやく紹介料が手に入る。アズーム社長も「マッチングサービス事業は労働集約型事業」と決算説明会で話している。アズームの採用サイトや社員のインタビューを見ても、社員の多くがマッチングサービス事業の営業職に就いているようだ。

 

人件費と手間をかけて、他社の駐車場の紹介をして、受け取るのは1ヶ月分の紹介料のみ。あまり効率的な事業ではない。

だけど、それが重要なんだ。

 

 

2.月極駐車場のプラットフォーマーの地位を目指す

アズームのコアとなる事業は駐車場のサブリースだ。サブリースは、借りてきた駐車場が貸し出されてはじめてお金が入る。借り手が見つからなければ赤字になる。

サブリースの駐車場がどれほど貸し出されているか、というのは重要なKPIだ。これは決算書などに「稼働率」として四半期ごとに発表されている。


過去の稼働率をグラフにしてみた。

f:id:nigatsudo:20200705121015p:plain

稼働率は86~91%の間を推移している。

当然だが、稼働率は利益率に直結する。これを高く維持することが、アズームのビジネスにとってとても重要だ。空きが出来たらすぐに新しい借り手を探さなければいけない。
この稼働率を高く維持するためにマッチングサービス事業が存在する。

 

f:id:nigatsudo:20200705121959p:plain

これは2018年の決算説明会のスライドだ。
駐車場の紹介数増加が、サブリース稼働率上昇とストック収益増加につながる事が示されている。

2018年12月21日のオンライン決算説明会で、社長が話していた。
「駐車場の紹介はフロービジネスであり、労働集約型事業でもある。でもそれを頑張ってプラットフォーマーになる。プラットフォーマーになるためには人員がいる。」
マッチングサービス事業は人員をかけた泥臭いビジネスだが、それを地道にやり続けることでサブリース事業の安定稼働が成り立つ。

実際アズームは、マッチングサービス事業に営業の人員を多数配属しているだけでなく、コールセンターも外部に委託せずに社内でやっている。マッチングサービスの品質を上げるための施策だと思ってる。

アズームの社長はやるべき仕事をわかっている。

 

 

3.プラットフォーマーになれたのか?

それで、実際にプラットフォーマーになれたのか?

駐車場を借りたい人の立場に立って考えてみる。
借りたいと思った時、ほとんどの人がGoogleなどで検索するのではないだろうか。そこでの検索順位がプラットフォーマーとしての地位と考えていいだろう。

Googleで「月極駐車場」と検索するとこうなる。

 

f:id:nigatsudo:20200705124326p:plain

 

1位 月極駐車場どっとこむ
2位 タイムズ
3位 駐マップ
4位 アットパーキング
  ↓
 画面をスクロールして
  ↓
9位 カーパーキング

 

9位・・・。この結果はツラい。


シェアーズレポートでも、駐車場の検索サイトとしての知名度が低いことをアズームの弱みにあげている。

https://sharedresearch.jp/system/report_updates/pdfs/000/032/504/original/3496_JP_20200601.pdf?1590992370

 

 

しかし、本当に駐車場を借りたい人が、「月極駐車場」と検索する事はないだろう。
「月極駐車場 地名」で検索するのが一般的だと考える。

というわけで、試しにGoogleで「月極駐車場 大手町」と入れてみる。するとこうなる。

 

f:id:nigatsudo:20200705125745p:plain

東京都の大手町をイメージしていたが、広島市の大手町も含めてカーパーキングが1位と2位を独占している。


いろいろ試してみたが、「上野」「六本木」「赤坂」などの狭い地域で検索ランキング1位になることが多いようだ。「港区」「新宿区」と、すこし広くすると2位。もっと広くして「東京」と入れても2位だった。

 

「月極駐車場」という大きな検索ワードでは弱い。しかし実際に駐車場を探す人が検索するだろう「月極駐車場 (狭い地域)」では、ほとんど1位だった。
これは株主として十分満足できる結果だ。

 

 

もうひとつ。
信用やブランドを考えて直接企業を選ぶ人もいるかも知れない。
Googleで「月極駐車場」と打って検索候補を示させてみると、こうなった。

 

f:id:nigatsudo:20200705131909p:plain

 

やっぱりタイムズのブランドは強い。「どっとこむ」のブランドで検索する人もそれなりにいるようだ。


ちなみに「月極駐車場 検索 神奈川」「月極駐車場 問い合わせ」「月極駐車場 空き待ち」「月極駐車場 大阪」での検索順位は、カーパーキングがそれぞれ1位、1位、2位、3位だった。悪くない結果だろう。

 


検索順位と並んでもうひとつ。掲載件数についても調べてみた。掲載件数が少ないサイトはプラットフォーマーになることは出来ない。
大手でも掲載件数を公開していないサイトもある。公開しているものだけを列挙するとこうなった。


1位 カーパーキング  41,269件
2位 駐マップ     30,340件
3位 アットパーキング 29,419件

 

堂々の1位だ。
「駐車場ドットコム」と「タイムズ」の掲載件数は公開されていないのだけど。

 


4.まとめと次回予告

・マッチングサービス事業は売上の割には人手がかかる

・しかしマッチングサービス事業はサブリース事業を成り立たせるための重要なパーツ

・運営している「カーパーキング」というサイトの検索順位ヨシ

・引き続きプラットフォーマーとしての地位を固めるために頑張ってください

 


これでサブリース駐車場の「貸し手」「借り手」について書きました。
次回はアズームを含む「仲介者」について書きます。もちろん競合も含めて。

 

 

  銀河英雄伝説1巻がKindleで110円。買ってしまった。
          読み始めるとヤバそうなのでしばらく積んどくですが。