アズームを買った理由③ 駐車場の借り手を見つける
1.マッチングサービス事業
ビジネスを分析するときは「お金を払うのは誰か」という事を十分考えなくてはいけない。アズームのビジネスについては簡単だ。駐車場を借りるひとが月額でお金を払う。
借りる人がいなければアズームが借り上げた駐車場は賃料を支払う一方になる。それでは赤字なので、借り手を見つけてくる必要がある。
借り手を見つけるためにやっているのがアズームのマッチングサービス事業だ。
アズームは「Car Parking」という月極駐車場検索サイトを運営している。
駐車場を借りたい人がこのサイトで検索する。アズーム側が借り手にちょうどいい駐車場を提案し、契約する。その際、駐車場料金1ヶ月分のお金を紹介料として受け取る。
これがアズームのマッチングサービス事業のビジネスだ。マッチングサービス事業は、アズームの売上の10%程度を占めている。
このサイトが掲載している月極駐車場の総数は、2020年7月5日現在で41,269件。一方アズームが受託しているサブリース駐車場は、2020年2Q時点で10,551件。後述するが、サブリース駐車場の稼働率は90%程度なので、空いている駐車場は10%となる。計算すると、アズームの自社物件は1,055件しか掲載されていない事になる。これはサイトが掲載している駐車場の2.6%に過ぎない。
マッチングサービス事業が仲介しているのは、ほとんどが他社物件という事だ。
一方、駐車場マッチングサービスはかなり人手がかかるビジネスらしい。ひとりひとりのお客に、場所や駐車場のタイプや期間などを確認し、契約を結ぶことでようやく紹介料が手に入る。アズーム社長も「マッチングサービス事業は労働集約型事業」と決算説明会で話している。アズームの採用サイトや社員のインタビューを見ても、社員の多くがマッチングサービス事業の営業職に就いているようだ。
人件費と手間をかけて、他社の駐車場の紹介をして、受け取るのは1ヶ月分の紹介料のみ。あまり効率的な事業ではない。
だけど、それが重要なんだ。
2.月極駐車場のプラットフォーマーの地位を目指す
アズームのコアとなる事業は駐車場のサブリースだ。サブリースは、借りてきた駐車場が貸し出されてはじめてお金が入る。借り手が見つからなければ赤字になる。
サブリースの駐車場がどれほど貸し出されているか、というのは重要なKPIだ。これは決算書などに「稼働率」として四半期ごとに発表されている。
過去の稼働率をグラフにしてみた。
稼働率は86~91%の間を推移している。
当然だが、稼働率は利益率に直結する。これを高く維持することが、アズームのビジネスにとってとても重要だ。空きが出来たらすぐに新しい借り手を探さなければいけない。
この稼働率を高く維持するためにマッチングサービス事業が存在する。
これは2018年の決算説明会のスライドだ。
駐車場の紹介数増加が、サブリース稼働率上昇とストック収益増加につながる事が示されている。
2018年12月21日のオンライン決算説明会で、社長が話していた。
「駐車場の紹介はフロービジネスであり、労働集約型事業でもある。でもそれを頑張ってプラットフォーマーになる。プラットフォーマーになるためには人員がいる。」
マッチングサービス事業は人員をかけた泥臭いビジネスだが、それを地道にやり続けることでサブリース事業の安定稼働が成り立つ。
実際アズームは、マッチングサービス事業に営業の人員を多数配属しているだけでなく、コールセンターも外部に委託せずに社内でやっている。マッチングサービスの品質を上げるための施策だと思ってる。
アズームの社長はやるべき仕事をわかっている。
3.プラットフォーマーになれたのか?
それで、実際にプラットフォーマーになれたのか?
駐車場を借りたい人の立場に立って考えてみる。
借りたいと思った時、ほとんどの人がGoogleなどで検索するのではないだろうか。そこでの検索順位がプラットフォーマーとしての地位と考えていいだろう。
Googleで「月極駐車場」と検索するとこうなる。
1位 月極駐車場どっとこむ
2位 タイムズ
3位 駐マップ
4位 アットパーキング
↓
画面をスクロールして
↓
9位 カーパーキング
9位・・・。この結果はツラい。
シェアーズレポートでも、駐車場の検索サイトとしての知名度が低いことをアズームの弱みにあげている。
しかし、本当に駐車場を借りたい人が、「月極駐車場」と検索する事はないだろう。
「月極駐車場 地名」で検索するのが一般的だと考える。
というわけで、試しにGoogleで「月極駐車場 大手町」と入れてみる。するとこうなる。
東京都の大手町をイメージしていたが、広島市の大手町も含めてカーパーキングが1位と2位を独占している。
いろいろ試してみたが、「上野」「六本木」「赤坂」などの狭い地域で検索ランキング1位になることが多いようだ。「港区」「新宿区」と、すこし広くすると2位。もっと広くして「東京」と入れても2位だった。
「月極駐車場」という大きな検索ワードでは弱い。しかし実際に駐車場を探す人が検索するだろう「月極駐車場 (狭い地域)」では、ほとんど1位だった。
これは株主として十分満足できる結果だ。
もうひとつ。
信用やブランドを考えて直接企業を選ぶ人もいるかも知れない。
Googleで「月極駐車場」と打って検索候補を示させてみると、こうなった。
やっぱりタイムズのブランドは強い。「どっとこむ」のブランドで検索する人もそれなりにいるようだ。
ちなみに「月極駐車場 検索 神奈川」「月極駐車場 問い合わせ」「月極駐車場 空き待ち」「月極駐車場 大阪」での検索順位は、カーパーキングがそれぞれ1位、1位、2位、3位だった。悪くない結果だろう。
検索順位と並んでもうひとつ。掲載件数についても調べてみた。掲載件数が少ないサイトはプラットフォーマーになることは出来ない。
大手でも掲載件数を公開していないサイトもある。公開しているものだけを列挙するとこうなった。
1位 カーパーキング 41,269件
2位 駐マップ 30,340件
3位 アットパーキング 29,419件
堂々の1位だ。
「駐車場ドットコム」と「タイムズ」の掲載件数は公開されていないのだけど。
4.まとめと次回予告
・マッチングサービス事業は売上の割には人手がかかる
・しかしマッチングサービス事業はサブリース事業を成り立たせるための重要なパーツ
・運営している「カーパーキング」というサイトの検索順位ヨシ
・引き続きプラットフォーマーとしての地位を固めるために頑張ってください
これでサブリース駐車場の「貸し手」「借り手」について書きました。
次回はアズームを含む「仲介者」について書きます。もちろん競合も含めて。