1.ドゥテルテ大統領の経歴が濃い
フィリピンの事を知るためには、フィリピンの政治を執り行っている大統領について知る必要がある。
フィリピンのドゥテルテ大統領はものすごくキャラが立っている。タイの首相は知らなくてもフィリピンの大統領は知っているという方も多いだろう。
ドゥテルテ大統領の経歴は、以下のように香ばしいエピソードに満ちている。
・フィリピンのレイテ島に生まれ、幼少時にミンダナオ島のダバオに移り住む。
・10代の頃は喧嘩にあけくれ、度々刑務所に出入りしていた。
・16歳の時に初めて人を刺殺した
・大学進学後、少数民族の出自をからかった同級生を銃撃
・タバオで10年間検察官として働いた後にダバオ市長へ
・フィリピン最悪だったタバオの治安を、犯罪者を超法規的に殺害することで改善
・自らも直接犯罪者を3人射殺、また強姦容疑者をヘリから投げ捨てる
・欧米の人権団体やマスコミはドゥテルテ氏を強く批判するも、住民は支持
・2016年よりフィリピン大統領に就任
・大統領就任後も犯罪者を超法規的に射殺することで治安を改善
・2020年1月21日に実施された世論調査で支持率は驚異の82%
犯罪者を自ら撃ち殺して治安を良くしたらしい。
大変に濃い人物だ。ウィキペディアを読むだけでお腹いっぱいになれる。
ドゥテルテ政権の支持率82%、全世代と全地域から高い支持(フィリピン) | ビジネス短信 - ジェトロ
2.ドゥテルテ大統領の公約
このドゥテルテ大統領の公約はシンプルだ。
「汚職、麻薬、貧困を撲滅して治安をよくする」である。
その具体的な方法として、これまで通り犯罪者をどんどん現場で射殺する方法がとられた。犯罪者の人権より治安改善を優先した訳だ。
大統領就任後1か月で、逮捕現場で警官が犯罪者を射殺する事件が1,800件発生している。就任後半年で射殺された人数は6,182人まで増加した。
もちろんフィリピンにも法廷があり、人権は法律で保護されている。しかしドゥテルテ大統領は「人権に関する法律などは忘れてしまえ」と明言している。
海外の人権団体は当然のように非難しているが、フィリピン国民は「治安が良くなった」という結果を強く支持しているようだ。
一方、貧困対策は射殺だけでは行えない。貧困対策はどのように進めるのか。
ドゥテルテ大統領は経済にそれほど明るい訳ではない。そのため、フィリピン航空などの役員でもあるドミンゲス氏を財務大臣に指名し、貧困対策を任せた。
貧困対策の方法として以下の3つを上げている。
1.以前の経済政策を継続しながら外資の誘致を行って雇用を創出すること。
2.インフラ投資の拡大を行う事
3.包括的な税制改革を行う事
この3つはいずれもIPSにとっては追い風だ。
1.について、IPSはフィリピンにとって外資だし、「外資排斥」のような方向性が決まれば向かい風になる。しかしドゥテルテ大統領は、外資を誘致することで経済発展を目指す従来からの方法を踏襲するようだ。
2.について、IPSはフィリピンに通信インフラを構築している最中だ。今後も認可その他の仕事がやりやすくなると考えられる。
3.の税制改革には法人税の減税が含まれる。現在のフィリピンの法人税は30%だが、これを毎年1%ずつ減税して2029年には20%にする法案が提出されている。
更に新型コロナ感染症の影響で、法人税を即時25%に減税し、その後20%まで段階的に減らすという案も出されている。
これは、フィリピン国内通信通信事業を行う子会社であるInfiniVANや、医療・美容事業を行うShinagawa Lasik & Aesthetics Center Corporation にとっては間違いなく追い風になる。
法人税即時減税の税制改革修正法案を提出、経済特区優遇制度も一部修正(フィリピン) | ビジネス短信 - ジェトロ
3.フィリピンの産業
フィリピンの産業については、外務省のサイトにこのような記載がある。
「近年、コールセンター事業等のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業を含めたサービス業が大きく成長(全就業人口の約58%が従事)(2019年1月)」
「コールセンター事業などのBPO産業が大きく成長している」これはどういう事か。
フィリピンは1946年に独立するまでUSAの植民地だった。その事もあってかフィリピンでは英語普通に通じる。英語はフィリピンの公用語の1つだし、学校でフィリピノ語と共に教えられている。ハリウッド映画も字幕無しでテレビ放映されている。
フィリピン人は英語が話せるので、コールセンターが多数作られている。つまり、英語圏でお客様相談センターに電話すると、フィリピンに繋がって対応してくれる訳だ。
このビジネスが成り立つ条件として、海外とつながるインターネット回線が必要だ。いくら英語を話す人材が豊富でも、それをつなげる回線がなければどうしようもない。インターネット回線は、フィリピンの主要産業を支えるインフラなんだ。
このBPO産業の基本となるインターネット回線をIPSが敷設している。
フィリピン政府がIPSを排斥する可能性はとても低いだろう。
4.まとめ
・ドゥテルテ大統領はかなりヤバい政治家だがフィリピンを良くしようと考えている
・そのために「汚職、麻薬、貧困を撲滅する」という公約を掲げている
・犯罪者の人権や法律遵守より治安改善を優先
・その手法をフィリピン国民は支持
・経済を発展させるため、外資誘致、インフラ投資拡大、税制改革を行っている
・フィリピンの産業構造からも、ネットインフラを作っているIPSの事業は追い風
・大統領の出身地であるミンダナオ島でもIPSは絶賛投資中
・フィリピン政府がIPSを排斥する可能性はとても低い
海外でのビジネスはカントリーリスクがつきものだ。でも日本にも大震災などのリスクは確実に存在している。
海外でのビジネスがメインのIPSをポートフォリオに組み組むことは、震災などのリスクヘッジにもなるのではないか。そんな事も考えています。
山本潤さんが書いたもう一冊の本。こちらもおすすめです。