中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

手間いらずを買わなかった理由②

ベッドでくつろぐ女性のイラスト

1.なぜ買わなかった手間いらず

ホテルの予約サイトを一括してコントロールするサービスを提供する「手間いらず」。

すごく儲かっているし、年間20%のペースで成長している。ビジネスモデルとしても秀逸でリスクが小さく儲けが大きい。顧客であるホテル側にとってもメリットが大きいサービスだし、実に私好みの会社だ。

それでも株を買わなかったのは何故か。

 

それは競合と、市場の大きさが気になったからだ。

 

 

2.手間いらずの競合他社

ホテルの予約サイトを一括してコントロールする、というビジネスはだれが考えたのだろう。すごくいいアイデアだと思うのだけど、それを誰が考えたかは分からない。

 

発明品には特許がある。薬品メーカーのように、特許が利益の源泉になっている会社は少なくない。しかしビジネスのアイデアには特許がない。

いいアイデアを考えても独占することができない。誰でもパクることが可能なんだ。

 

ホテルの予約サイトを一括してコントロールするサービスだが、提供しているのは手間いらずだけではない。競合他社がいくつもある。

競合他社の調査は株を買う前にかならず行うべきだろう。

以下に手間いらずの競合他社を列挙していく。

 

① ねっぱん

予約サイトコントローラー業界のトップシェア。楽天のグループ会社なので楽天トラベルに登録していれば無料で使える。そのこともあり、2018年9月の段階で、ねっぱんを利用している施設は8,000だった。

 

② TLリンカーン

リクルートJTBの関連会社。リクルートといえば「じゃらん」、JTBといえば「るるぶ」だ。TLリンカーンは「じゃらんnet」や「るるぶトラベル」と連携している。大企業の信用もあってか大規模ホテルや老舗旅館などの利用が多いらしい。初期費用10万円、月額費用15,000円~とややお高い。約4,000施設に利用されている。

 

③ その他のサービス

ルームマネージャー、らく通with、AirHost PMS、民泊ダッシュボード、など。きちんと調べなかったけど同様のサービスを行っている会社は多数あった。

 

④ 手間いらず

初期費用5万円、月額9,900円~。利用施設数は公開されていない。

しかし2019年1Qのストック部分の売り上げが3億0353万円だった。3で割ると一か月あたり1憶118万円になる。この売り上げ全てが最低料金である9,900円のコースだと仮定すると10,000施設が利用していることになる。しかし業界シェアトップのねっぱんが8,000施設なのでそれはあり得ない。いろいろ計算して、手間いらずを利用しているのは5,000施設と推定した。

 

 

3.市場規模はどのくらいか

H27年3月に厚生労働省が行った統計がある。これによると、日本全国のホテル数は9,779施設、旅館は41,899施設、簡易宿泊房は26,349施設だ。すべての宿泊施設を合わせると78,127施設となる。

この78,127施設がすべて予約サイトコントローラーを使用する可能性はとても低い。そもそも予約のできないサウナやラブホテルが存在するし、真面目に経営するつもりのない民宿や旅館などいくらでもある。

手間いらずの顧客になるような真面目な宿泊施設はどのくらいあるのだろうか。いろいろ調べて、私は4万施設と概算した。

 

業界トップのねっぱんが8,000施設、TLリンカーンが4,000施設、手間いらずが5,000施設(予想)、その他がどのくらいあるかは調べなかったが、合わせると3,000施設はいいっているだろう。となると、全部で2万施設がなんらかの予約サイトコントローラーを利用していることになる。

真面目にやっている宿泊施設が4万、導入済みが2万。すると残りが2万しかない。

 

 

4.当時の結論

手間いらずは年間20%以上、成長している。

競合他社も同様に成長すると仮定すると、2万施設が4万施設まで増加するまで4年もかからない。

 

購入を検討していた2019年5月の手間いらずのPERは35倍前後だった。

PER 35というのはかなり高い。毎年20%成長しているからこそPER 35という評価がされていると考えられる。

3年後はもう成長の限界が見え始めている可能性がある。その時にPER 35という数字で評価されることはないだろう。3年後は今よりずっと成長しているだろうけど、それ以降の成長は難しいのではないか。

豊富な資金でM&A、という成長戦略を描くことは可能だ。しかし手間いらずの社員数はわずか38人だ。そんな小規模な会社がM&Aをスムーズに行うほどの人材を抱えているものだろうか?

 

そんな不確定な未来に投資することはできない。もっと安全確実な投資先は他にある。

そう考えて、手間いらずは買わなかった。

 

結果は前回書いた通りだ。2倍以上に上がっている。

 

 

5.現在の振り返り

それなりに時間をかけて調査した手間いらずだったけど、買わなかった。

買っておけばお金が2倍に増えていた。とても残念だ。

 現在の手間いらずのPERは52.8倍。成長に限界があると思われている会社の株価ではない。

成長に限界があるって判断しているのは私だけかもしれない。あるいは成長に限界があっても数年先まで考える必要がないのかもしれない。3年先まで株を持ってる人の方が少なさそうだし。

 

あるいは、手間いらずの株価が上がったのはたまたまかもしれない。

今年はなかなか地合いが良く、特にここ最近は小型株の上昇が目立っている。この地合いだったからこそ手間いらずも上がったのかもしれない。地合いがよければ企業に対する目は甘くなる。地合いが悪いときはとても厳しくなる。

いずれにしても先の事はわからないんだし、株に「たられば」は要らない。 手間いらずを買わなかった私は結果から見ればへたくそだが、違う結果が出ている可能性だってあるんだ。

 

 

今回の話は「株を買う前の調査はこんな風にやるといいですよ」という例のつもりだった。買っていないのだから文章に魂は込められていない。

 

でもこんな風に思考の過程を残しておくことは重要だと思う。

買った株も買わなかった株も、私はぜんぶ手書きで記録を残している。だからこそこんな記事が書けます。データは既に古いですが。

 

先の事はわからないと書いたが、少しでも勝つ確率を上げることは可能だ。勝つ可能性を上げる方法として、今回の話を書きました。

 

「思考の過程をノートに残す」

初心者の方はぜひ参考にしてください。

 

 

  ああ、旅行に行きたい。