中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

成長株の株価とシラスウナギの値段

 

マッチ売りの少女のイラスト

1.シラスウナギの値段

さて、土用の丑の日となった。前回書いたようにうなぎを食べる予定はない。

でも、今日はうなぎの養殖の話の続きを書いてみたい。

 

 

上の記事に書いたとおり、うなぎの稚魚であるシラスウナギは1kgあたり180万円から360万円もするらしい。こんなに高い値段で取引される食用の魚類が他にいるのだろうか?

このような値段がつくのは、シラスウナギがうなぎに成長するからだ。

きちんと管理して育てれば、1匹0.2gのシラスウナギが200gから300gまで大きくなる。シラスウナギそのものを食べる話は聞いたことがない。シラスウナギの価値は「うなぎに成長する可能性」に付けられている。

 

養殖の環境下において、シラスウナギが出荷できるサイズのうなぎに成長する可能性は50%程度らしい。約半分の確率で、0.2gのシラスウナギが200gまで大きくなる。

そしてうなぎのサイズは決まっている。1匹のシラスウナギが100kgのうなぎに成長することはないし、100kgに成長したところで高く売れることはない。

更に、シラスウナギが200gのうなぎに成長する期間も決まっている。12月から1月に養殖池に入れられたシラスウナギは、次の年の7月にはもう出荷できる。たった半年で1,000倍の大きさになってくれるわけだ。

そんなわけで、うなぎの養殖が儲かるかどうかは私のような素人でもある程度計算することができる。シラスウナギの値段と、その成長の期間、うなぎに成長する確率、出荷時のうなぎの値段を計算すればいい。

うなぎの養殖は儲からない、というのが結論だった。 

 

 

2.成長株の株価

 一方、企業についてはどうだろう?

小さな企業の株を買って、成長するのを待つのは株式投資の醍醐味だ。そのような投資方法を「成長株投資」というが、成長株投資こそが投資の王道だと思っている。私のポートフォリオも、ほとんどが小さな企業で占められている。

 

というわけで、うなぎの養殖と同様に企業への投資が儲かるかどうか考えてみよう。

現在の企業の値段と、その成長期間、成長する確率、将来の企業の値段を計算すればいい。

現在の企業の値段は、うなぎの養殖におけるシラスウナギ値段に相当する。企業の値段は、言うまでもなく現在の時価総額の事だ。

その値段で買った企業がどのくらい成長するか、成長するまでどれだけの期間がかかるか、成長する可能性はどのくらいか、成長した企業の株がどれくらいの値段で売れるのか。そういうことを考えて、現在の株価が高いか安いかを判断する。

 

しかし、うなぎと違って企業の成長は先が見えない。

10年経っても全く成長しないかも知れない。成長するにしても、20年かけて1.5倍にしかならなかった、では話にならない。その間に環境が変わって潰れてしまうかもしれない。成長した後の株価も想像がつかない。

 

 

 3.成長株の原価計算

うなぎの養殖を始めるにあたって、原価計算は絶対必要だ。1kgのシラスウナギをどのくらいの歩留まりで育てれば何百万円になるのか?そういう事をシュミレーションした後で無いと、職業としての養鰻家は成り立たない。

 

同じように、成長株の投資も原価計算が必要だ。

その企業がどのくらいまで成長するのか?成長する可能性はどのくらいなのか?うまく行った場合の5年後の売上と利益はどのくらいか?うまく行かなかった場合はどのくらいなのか?うまく行ったときの株価はどこまで伸びるのか?うまく行かなかった時は株価はどうなるか?成長が順調かどうかは何を見て判断するのか?

 そのような「成長株投資の原価計算」をする必要がある。

 

もちろん先のことはわからない。その企業の経営者ですらわからないくらいだ。外野の投資家が将来の姿を正確に判断するのはとても難しい。

 

 それでも、成長株投資をするなら絶対にやるべきだ。たとえ予想が外れても、何も考えずに投資するより何万倍も意味がある。考えた末に予想を外した場合、それは本人の実力のための肥やしになる。

考えもせずに失敗した場合、それは犬も食わないような「ただの無駄」だ。

 

 

4.成長株の株価と妄想

シラスウナギの値段が例えば1kgあたり600万円になった場合、養殖業者が儲かる可能性はとても少ない。1匹も死ぬことなく出荷できるうなぎまで成長したとしても、1kgのうなぎは1,000kgにしかならない。過去最高値である2019年6月うなぎの卸売価格の5,739円で計算しても、1,000kgのうなぎは573万9,000円だ。既に赤字になっている。そこから更にエサ代や光熱費や設備の減価償却や人件費が引かれる。大赤字だ。

 

しかし、成長株には時々そんな値段がつく。毎年40%づつ成長してもその株価は正当化されないんじゃないか?というような株価が付くことがある。

たしかに企業の成長はうなぎの成長と違って天井がない。

それでも、どう考えても割高だろうっていう成長株も存在する。

 

その割高な株価を支えているのは「妄想だ」。Amazonのように、数年後に株価が100倍になることを夢見るわけだ。

妄想は、マッチ売りの少女が見た幻覚と同様に、マッチの火が消えるまでのような短い時間で消滅する。妄想に支えられていた株価は、支えを失って自由落下する。

 

妄想が産まれる直前にその株を買っておくのが一番いいんだろうけど。マッチ売りの少女がマッチを取り出した瞬間に、妄想が産まれることを予測して株を買う。妄想がひろがって株価が急騰した時にサッと売り払う。

ああ、そんな投資家にあこがれる。

 

でも、できないことを望んでも儲からない。まずはできることをやっていこう。

成長株の原価計算についての自分なりの方法を、いつか書いてみたい。