うなぎの養殖と成長株
1.うなぎの稚魚
うなぎの研究をしていた友人がいる。
ご存知の方も多いと思うが、うなぎの生態は実に複雑だ。うなぎは、フィリピン近くの太平洋で産卵する。そこで孵化した稚魚がわざわざ日本まで泳いでくる。日本まで泳いできた後、淡水にも住めるように体を作り変えて河川を遡上する。そこで大きくなって、我々の口に入るようなうなぎになる。大きくなったうなぎは再び海に下り、フィリピン近くまで泳いでいく。そんな遠くまで行って、深い海で産卵する。
そんな複雑な生態をもつうなぎだから、完全養殖は難しい。水槽やいけすでは、うなぎに卵を産ませるのが困難なんだ。冒頭に出てきた「うなぎの研究をしていた友人」は、完全養殖のための研究をしていた。
研究室レベルでは「うなぎー卵ー稚魚ーうなぎ」のサイクルを回すことはできるようになった。でも商売として成り立つほど、低コストでうなぎの完全養殖はできない。
現在のうなぎの養殖は、「うなぎの稚魚をつかまえてきて育てている」だけだ。
その稚魚は、野生のうなぎが産んだ卵から産まれている。野生のうなぎの減少と共に、うなぎの稚魚も減少している。
2.うなぎ養殖事業の分析
うなぎの稚魚は「シラスウナギ」とよばれる。シラスのように白くて細いからだ。
このシラスウナギ、漁獲高の減少によって価格が高騰している。kgあたり180万円から360万円もするらしい。数年前は20万円~30万円で取引されていたようなので、ずいぶん高くなっている。
参照:ウナギ稚魚、今年も少なく 取引価格は前月比4割高 | 八ッ場あしたの会
養殖業者はシラスウナギを買ってきて、育てて売る。シラスウナギは1匹0.2gくらいなので、1kgで5,000匹だ。0.2gのシラスウナギを、1年かけて200gから300gに育てる。だいたい1000~1500倍くらいになるわけだ。
上のグラフの通り、2019年6月うなぎの卸売価格がで5,739円だ。
1kgのシラスウナギを200万円で購入したとしても、1,000kgに育ったうなぎを574万円で売ることができる。
でも実際はシラスウナギが成魚にまで成長する割合は、うまくやっても50%程度らしい。半分が死んでしまえば、1kgのシラスウナギは500kgのうなぎにしかならない。そうなれば287万円だ。それに加えてエサ代も設備代も人件費もかかる。
うなぎの養殖って全然儲からないじゃないか・・。
これは、今後うなぎの値段が間違いなく上がるな・・。
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/235649.pdf#search=%27%E3%81%86%E3%81%AA%E3%81%8E+%E9%A4%8A%E6%AE%96+%E6%AD%A9%E7%95%99%E3%81%BE%E3%82%8A%27
3.成長株を買うということ
前振りのつもりだったんだけど、大規模に脱線してしまった。
このブログは株式投資のブログです。
いったいどうしてこんなに長々とうなぎの養殖について書いたのか?
「成長株を買うということは、シラスウナギを買うことだ」
これが言いたかった。
どんな大企業も、はじめは小さなベンチャー企業だ。小さな企業が無数の苦労を重ね、運と顧客に恵まれ、成長していくことで大企業になっていく。
ほとんどのベンチャー企業は、大きくなる前に消えていく。上場までこぎつける企業はほんの一部だ。でも、上場したあともちゃんと成長し、大きくなる企業は存在する。
企業が成長すれば、株価は上がる。それを想像して投資家は株を買う。
高いお金を払ってシラスウナギを買う養鰻家と同じだ。
シラスウナギは半分弱がうなぎになる。
ベンチャー企業が大企業に成長する可能性は、それよりずっと少ない。
それでも成長株は夢がある。いつかグーグルやアマゾンのような巨大企業に成長して、株主に多大な恩恵をもたらしてくれるかもしれない。
うなぎの養殖は大変な仕事だが、成長株は株主がぼんやりしていても成長してくれる。素晴らしいじゃないか。
でも、あんまり高い値段で成長株を買うことは勧めない。成長株の、将来の成長を折り込みすぎてる株価は、ちょっとしたつまづきで床を突き破るほど下落する。
シラスウナギを買うときも気をつけないと。
あんまり高いシラスウナギじゃあ、頑張って育てても元が取れなくなってしまう。