ジェイコム株大量誤発注事件とは
1.本当に市場にお金が落ちていた話
「マーケットで「価格のゆがみ」ができてもすぐに解消される。確実に儲かるチャンスなんだから、最初に見つけた人がそのチャンスを使ってしまう。
道に76,000円が落ちていたら誰でも拾う。同じように、マーケットに落ちているお金もすぐに拾われる。
何万人もが注目する株式市場なんだからなおさらだ。個人が裁定取引で稼ごうと思っても難しいだろう。」
前回そんなことを書いた。書きながら、過去には本当に株式市場にお金が落ちていたことがあった事を思い出していた。
ジェイコム誤発注事件っていう話だ。
今日はそのことについて書きたい。
2.ジェイコム株大量誤発注事件とは
今から10年以上前の2005年12月8日、総合人材サービス会社である「ジェイコム」の株がマザーズに新規上場された。
新規上場された株というものは、一般的に値動きが激しくなる。まだその会社の評価が定まっていないため、とんでもない高値まで上昇したり、その後に急落したりする。
そんな激しい値動きを利用してお金を稼ごうというトレーダーも多く集まり、そのためにますます値動きが激しくなる。
ジェイコムの上場当日、みずほ証券の男性担当者がジェイコム株の「61万円1株売り」の注文をするつもりで「1円61万株売り」と誤ってコンピュータに入力してしまった。午前9時27分56秒のことである。
その時、ジェイコムの株価はまだ初値が付いていなかった。一株90万円くらいで値がきまりそうな雰囲気だったのだけど、61万株という大量の売り注文のため67万2,000円の初値が付いた。その直後にストップ安となり、57万2,000円に張り付いてしまった。
90万円程度で評価されていた株に、1円の値段で61万株もの売りが出されたのだ。ストップ安になるのは当然だ。
そのストップ安に驚いて手持ちの株を売ってしまった投資家がいる一方、誤発注だと見抜いた投資家が大量の買い注文を入れた。
1円で61万株の注文を出した担当者は誤発注に気付き、青ざめて注文を取り消そうとした。1分25秒後の午前9時29分21秒の事だ。
しかし、こういう時に限ってシステムトラブルが起こってしまったらしく、取り消しがうまく行かなかった。何度か取り消しを試みたが、やはりうまく行かなかった。
みずほ証券は東京証券取引所に直接電話して注文を取り消すように依頼した。それでも注文は取り消されなかった。
みずほ証券は反対注文を出して、1円の売り注文を全部買い戻すことを決定した。その結果、9時43分には一時ストップ高である77.2万円にまで高騰した。
2005年12月8日午前9時27分56秒から9時43分までの15分間、市場にはお金が落ちていた。90万円ほどの株が57万2,000円で売られていたんだ。
お金を落としたのはみずほ証券。あわてて落としたお金を拾いに行ったけど、かなりの額のお金が既に拾われてしまっていた。
誤発注で出した61万株のうち、9万6,236株は既に買い取られていた。
この誤発注で、みずほ証券は407億円の損害を出したらしい。たった一度のミスで407億円が蒸発した。株取引は自己責任だ。てへぺろ、では許してもらえない。
3.落ちていたお金を拾った人たち/拾えなかった自分
ジェイコム株のストップ安からストップ高まで、その価格差は1株20万円だ。
それを数千の単位で取引して、数億円から数十億円の利益を上げた個人投資家もいる。
ああ、羨ましい。俺もその場所に居合わせていれば・・。
しかし運良く自分がその場に居合わせても、数億円のお金は拾うことができなかった。この事はよく理解しておく必要がある。
誤発注によるストップ安とは言え、一株57万2,000円だ。1,000株買うためには5億7,200万円必要だ。1,000株買えば2億円儲かるが、当時の私にジェイコム株を1,000株買う資金はなかった。
そして現在の私にも、そこまでのお金はない。
4.ジェイコム誤発注事件の教訓とは
再びジェイコム誤発注事件と同じような事がが起こる可能性は、ゼロではない。
でも、そこでお金を稼ぐことができる可能性は、限りなくゼロに近いだろう。事件から10年以上経過し、誤発注を防ぐシステムも発達したはずだ。だから、同じことを期待して市場をさまようのは効率が悪すぎる。
そんな幸運に頼らなくても、株式市場でお金をかせぐ事はできる。
では、ジェイコム誤発注事件に学ぶことがあるとすれば何か。
やはりこれに尽きるのではないか。
「お金を拾うだけの簡単な仕事でも、元手が少なければ稼げない。
だから頑張って種銭を集めよう」
「誤発注には気をつけよう。個人がお金を落としたら、それは二度と戻ってこない」
これからも頑張っていきたい。
いつの日か、数億円のお金を拾うことができるようになる日まで。
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