マークラインズ企業分析の最終回。前回までに書ききれなかったことと、今後の展開についての妄想を。
1.営業利益率が高い
マークラインズが運営する自動車産業情報ポータルサイトは、ほとんどライバルがいない。ライバルがいないので価格競争は起こらない。
だから毎月の使用料はマークラインズに決定権があり、十分な利益を上げることができる。顧客から「使用料をもっと安くしろ」と要求されても、「使用料が高いと思うなら使わなくてもいいですよ」と断ることができる。マークラインズ以外が運営している自動車産業情報ポータルサイトは存在しないのだから。
だから売上に対する利益率が高くなる。
マークラインズの2018年の売上高は20.4億円、営業利益は7.3億円だ。売上高に対する営業利益の割合を「営業利益率」というが、マークラインズの営業利益は35.9%だ。
営業利益率35.9%というのは、ものすごく高い。
伝説の投資家、ウォーレン・バフェットは「営業利益率が10%を超える企業は価格支配力がある」というような事を言っている。ライバルがいない企業は、自分の商品の値段を自分で決定する事ができるので利益率を高くすることができる。
営業利益率だけ見ても、マークラインズが独占的な事業を行っていることがわかる。
2.買った
そんな事を考えて、2016年9月にマークラインズの株を買った。2016年8月に発表された中間決算が期待はずれだ、と安くなっていたところをありがたく買わせてもらった。
その後の上昇は上記のチャートの通りだ。良い買い物が出来たと思っている。買った当時は「決算が悪くて暴落した」というような雰囲気だったが、長期のチャートを見るとほとんど変化していないように見える。
長期投資家にとって、短期の小さな値動きはただの「ノイズ」だ。
今もマークラインズの株の保有を継続しているが、高い所で売れなかったのはとても残念だった。2018年8月頃の、ピークをすぎた2,000円くらいで売ろうとも思ったんだけど、また上がっていくような気もして売れなかった。
売るのは買うよりずっと難しいんだ。
3.サブの事業
マークラインズの中核事業は、自動車情報のポータルサイトを運営しその有料会員から使用料を受け取る事だ。
それに加えて、自動車産業に特化した人材紹介やコンサルティング事業、市場予測販売、バナー広告、ベンチマークの提供なども行っている。こっちがサブの事業だ。
上のグラフは5つのサブ事業の2016年からの四半期ごとの売上高の推移だ。
色々やっていて少しずつ増えている印象はある。しかし「すごく変動している」っていう印象の方が強いだろう。
前々回も書いたが、この5つのサブ事業はストックビジネスではない。有料会員からの使用料は毎月決まった金額が振り込まれるストックビジネスだが、サブ事業はそうじゃない。サブ事業は、顧客から仕事の依頼がない限り売上も利益も上がらない。
だから変動が激しいんだ。
① たまたま、一時的に、サブ事業がいい数字を出すと株価は多分上がる。
② たまたま、一時的に、サブ事業が悪い数字を出すと株価は多分下がる。
一時的な変動だと確信できるのなら、②のときに株を買うべきだろう。
本当に一時的な変動か判断するのは難しい事も多いんだけど。
4.プラットフォーム、には足りない
マークラインズは運営している情報ポータルサイトの事を「情報プラットフォームサービス」と呼んでいる。
私はマークラインズの株主なんだけど「プラットフォームは言いすぎだろ」と思っている。
上の記事にも書いたが、プラットフォームビジネスの本質は「しくみ」を提供することだ。
メルカリは個人個人がお互いに商品を取引する「しくみ」を提供している。メルカリが自分で商品を仕入れて売っているわけではない。メルカリという会社は、あくまでも「しくみ」を提供しているだけだ。
マークラインズは自動車産業に関する情報を売っているが、その情報は自分で集めている。サイト利用者が情報を提供してくれるならそれはプラットフォームだけど、マークラインズは自分で情報を仕入れて売っている。
顧客に提供しているのは「情報」であって、「しくみ」ではない。
サブ事業でやっているコンサルティング事業や市場予測も、やっぱり「しくみ」じゃない。マークラインズがプラットフォームを名乗るには、少し足りないと思う。
しかし、自動車産業に携わる人々がマークラインズのサイトに集まる流れは出来ている。その人の流れを利用した、本当のプラットフォームビジネスを展開する土台は出来ているんだ。
実際、バナー広告のような本当のプラットフォームビジネスも始まっている。広告事業はまだまだ売上が小さいし、伸びてもいないのだけど。
今は自分で情報を集めて売っているマークラインズだが、やがてそのサイトで真のプラットフォームビジネスを展開できるようになると信じている。会員が自ら情報その他を持ち寄り、マークラインズはその仲立ちのみ行って取次手数料を稼ぐ。そうなれば更に次元の違う利益を上げていく事になるだろう。
その時こそ、セミが羽化して飛び立つように、株価も天高く舞い上がっていくはずだ。
幸いなことに、まだまだ有料会員数は伸びしろがある。メイン事業の成長をゆっくりと楽しみながら、マークラインズが大化けする時をゆっくり待つ事にしている。