中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

藤田晋「渋谷ではたらく社長の告白」を読んだ

忠犬ハチ公像のイラスト

 

私は株式投資を趣味でやっている。投資関連の本を読むのも趣味の一環なので、結構たくさん読む。投資関連の本の中には本当に酷い本もあるし、読んですぐにブックオフに売ってしまうような残念な本もある。

それでも、本はその情報の価値から考えると異常に安い。西暦1000年~2000年までの1000年間で、本はNo.1の発明品だと思っている。

 

投資関連の本に入るかはわからないが、創業者の本も結構読む。創業者の本が投資に役立つかはよくわからないが、なかなか面白い本が多い。

今回は趣向を変えて、読書感想文を書いてみる。サイバーエージェントの創業者である藤田晋が書いた「渋谷ではたらく社長の告白」だ。

 

会社を作ることを「起業」という。会社を作るのはとても簡単らしい。役所に行ってちょっと手続きをすれば、すぐに会社が作れる。会社をつくるのは簡単だが、それを維持していくのはとても難しい。維持して大きく成長させていくことはもっともっと難しい。

その難しいことをやりとげて会社が順調に大きくなっていくと、やがて株式を上場するという話がでてくる。株式が上場されて初めて、私のような個人投資家がその企業の株を買うことができる。

 

サイバーエージェントは、2018年10月から日経平均を構成する225社に採用されている。日本を代表する会社だと認められたわけだ。「渋谷ではたらく社長の告白」は、このサイバーエージェントという会社を作った「藤田晋」が書いた自伝だ。

福井県で過ごした中高生時代から話が始まり、やがて進学のため上京。アルバイトをしながら仕事を学び、サイバーエージェントを創業。ITバブルの絶頂期に株式上場を果たすが、バブル崩壊とその後の株価低迷のため塗炭の苦しみを味わう。そんな話だ。

いくつか引っかかった点があったので、感想を書いてみる。

 

サイバーエージェントの創業は「裏切り」から始まる。

藤田氏と、その友人と、かつてお世話になった上司。3人が集まって会社をつくることになったのだが、出資比率の問題で早々に行き詰まる。結局、最初に集まった3人は創業前にバラバラになり、社長の藤田氏しか残らなない。

ここまで読むだけで、少し凹む。少年ジャンプのテーマではないが、創業者の成功物語には「友情・努力・勝利」を期待してしまう。国民的海賊漫画であるワンピースも、物語の最初は仲間集めから始まるではないか。しかし、サイバーエージェントは一番最初に仲間が解散してしまう。これは、少なくとも一般受けするストーリーではない。

藤田社長もこのことが強く引っかかっているようで、本書の中でも何度もこの「裏切り」について言及している。それが本全体に暗い影を落としている。

 

・それでも創業が決まった会社だが、その時点で具体的な事業内容が決まっていない。

インターネット上で本屋さんをやろうとしてAmazonができた。だれでも使える個人用のコンピューターを作ろうとしてApple computerができた。なんらかの事業アイデア、あるいは事業の核となる技術があるからこそ会社をつくる。創業っていうものはそんな物だと思っていた。

しかし、サイバーエージェントはそれが全くない。会社を作ってから事業内容を考えている。正直「そんなタイプの創業もあるんだなあ」と感心した。自分は完全な理系なので、事業アイデアも技術もない創業に違和感と不安を感じた。

でも世の中には、会社の核としての思想が「営業」だという会社って多いんだろうな。

 

・ITバブルの頂点で株式上場。その後の株価下落。

サイバーエージェントは創業してわずか2年で上場を果たす。上場時の株価は1520万円、時価総額は225億円だった。社内からも2億円分の株の購入申し込みがあった。

しかし、上場した時がITバブルの頂点だった。上場後ほどなくITバブルは崩壊。他の多くの株と共に、サイバーエージェントの株価も上場後下がり続けた。一時期は株価が上場時の10分の1まで下がった。

投資していた株主は株価下落の責任について藤田社長を問い詰め、「死んでお詫びしろ」とまで迫った。藤田社長も精神的に追い詰められ、大変な苦労をする。社員が買った自社株も10分の1に下がっている訳だから、社員のモチベーションにも影響する。

株価低迷が上場企業の社長をどれほど悩ませるかを知る格好の教材だと思う。今頃プレミアグループの社長も、もんもんと苦しんでいるのだろうか。株を買っていた株主である私も苦しいんだけどね。

 

もちろんサイバーエージェントは危機を乗り越え、最終的に日経225に採用されるまでの大企業となった。2019/1/11現在の時価総額は5340億円だ。上場時の時価総額など、もはや比較にもならない。藤田社長の苦労も報われたと言っていいだろう。

 

しかし、藤田社長はそこまで株価低迷に悩まされていたにもかかわらず、なぜ「自社株買い」をしなかったのだろうか?

確かに 2002年2月には自社株買いをしているのだけど、そこまで苦労したのならもっと早いタイミングでもいい気がする。2001年に入った頃、サイバーエージェント時価総額が90億円、会社が保有している現金が180億円だったのだから。

 

 自社株買いとは何か?

 というわけで、次回は自社株買いについて書く。

 

システムディの分析の話はもう少し後に・・。