ふたたびキャッシュフロー計算書の話
1.現金を増やす方法
前回、キャッシュフロー計算書を見ると企業が持っているお金の金額がわかるという話を書いた。せっかく話が出てきたので、ついでにもう少しキャッシュフロー計算書の話を続けたいと思う。
さて、お金をほとんど持っていない中学生のみなさん。
突然ですが、私が手持ちの現金を増やす方法を教えてあげます。
実は手持ちの現金を増やす方法は3つあります。
① 稼ぐ
② 財産を売る
③ 借金する
この3つ。
バカにしてんのか?と怒らないで。これはとても大事な話なんだ。
順番に説明する。
まず、① 稼ぐ。
アルバイトをして給料をもらう、自分でたこ焼き屋を始めて利益を得る、現金が当たる懸賞に応募する。
なんでもいい。とにかく稼ぐこと。お金を稼ぐと手持ちの現金は増える。
しかし稼ごうとしても、たこ焼きが売れなければ赤字になる。懸賞が当たらなければ切手代が無駄になる。稼ぐのが失敗すれば手持ちの現金は減る。
そして② 財産を売る。
持っている本をブックオフに売る、ポケモンカードをヤフオクで売る、じいさんから貰った古銭をメルカリで売る。
なんでもいい。財産を売って代金を得る。財産を売ると手持ちの現金は増える。
逆に財産を買うと手持ちの現金は減る。
最後に③ 借金をする。
家族からお金を借りる。友達からお金を借りる。奨学金を借りる。
なんでもいい。借金をすれば手持ちの現金は増える。
借金を返すと現金は減る。
2.キャッシュフロー計算書
やっぱりバカにしてる、と思わないでほしい。
この3つが理解できれば、キャッシュフロー計算書は理解できるんだ。
これは、前回の記事でも出てきたシステムディのキャッシュフロー計算書だ。
キャッシュフロー計算書を見ると、企業がどのくらい現金を持っているかがわかる。
上の表の一番下の欄「現金及び現金同等物の期末残高」の部分だ。
ここに書いてある通り、システムディは平成30年10月31日の時点で7億3,239万円の現金を持っている。
キャッシュフロー計算書は、このお金をどのように手に入れたかが書いてある表だ。
まず、下から2行目を見てほしい。「現金及び現金同等物の期首残高 520,247」と書いてある。
一番下の欄は「期末残高」、下から2行目は「期首残高」だ。
つまり、1年前の平成29年10月31日には、システムディが5億2,024万円の現金を持っていたという意味だ。それが1年後に7億3,239万円になっている。
1年間で2億1,215万円増えた。どうやって増やしたのか?
それが書いてあるのがキャッシュフロー計算書だ。
3.稼ぐ、財産を売る、借金する
ここで話が最初に戻る。
お金を増やす方法には、① 稼ぐ、② 財産を売る、③ 借金する、の3通りあると書いた。
上のキャッシュフロー計算書でマーキングしてある部分の、
「営業活動によるキャッシュフロー」とは「① 稼ぐ」の方法でお金を増やした額が書いてある。システムディの営業活動によるキャッシュフローは11億1,989万円。つまり、システムディは業務支援ソフトの商売で1年間に11億円以上稼いだということだ。
「投資活動によるキャッシュフロー」とは「② 財産を売る」の方法でお金を増やした額が書いてある。システムディの投資活動によるキャッシュフローは▲6億4,656万円、マイナスだ。つまり、システムディは財産を売るのではなく買っているんだ。6億円以上のお金を、財産を得るために使っている。
もちろんシステムディはポケモンカードや金塊などの財産を買ったわけではない。仕事に必要なパソコンや机などの財産を買ったんだ。すべて今後の仕事に役立てるための出費だ。だから財産を買った出費の事を「投資活動」と呼んでいるんだ。
「財務活動によるキャッシュフロー」とは「③ 借金する」の方法でお金を増やした額が書いてある。システムディの財務活動によるキャッシュフローは▲2億6,118万円。これもマイナスだ。つまり、システムディは借金をするのではなく、返しているわけだ。稼いだお金から2億6千万円の借金を返済したのだ。
まとめると、システムディは本業で11億円以上稼ぎ、6億円以上の財産を買い、2億円以上の借金を返した。その結果、5億2,024万円の現金が、1年後に7億3,239万円に増えた。そういう事がキャッシュフロー計算書で読み取ることができる。
4.まとめ
とりあえず大事なところはここまで。
お金を増やす3つの方法は、① 稼ぐ、② 財産を売る、③ 借金する、の3通り。
それぞれ、① 営業活動によるキャッシュフロー、② 投資活動によるキャッシュフロー、③ 財務活動によるキャッシュフローと呼ばれている。それぞれの金額が、キャッシュフロー計算書には分けて書かれている。
キャッシュフロー計算書を読む上で、まず理解するのは5行だけでいい。
一年前の現金の額である「現金及び現金同等物の期首残高」
現在の現金の額である「現金及び現金同等物の期末残高」
なぜそのように変化したのかが3つに分けて書かれている、
① 営業活動によるキャッシュフロー
② 投資活動によるキャッシュフロー
③ 財務活動によるキャッシュフロー
この5行だ。
企業はお金を稼ぐための組織なのだから。
お金の流れが書いてある部分が一番大事なんだ。
まずはここまで理解しよう。
以前に書いた記事も、合わせて読んでください。
キャッシュフロー計算書って家計簿と同じなんです。
企業はどれだけお金を持っているか?借金の額は?
1.企業の持っているお金はここに書いてある
企業の売上が全くなくなろうと、借金が何兆円あろうと、手元に現金さえ残っていれば倒産はしない。逆にどれだけ売上があって利益があったとしても、他社にお金を貸していたとしても、手元に現金がなくなってしまえば倒産する。
企業が手元にどのくらいお金を持っているか?それを調べておくことはとても重要だ。
そんな話を前回書いた。
企業が持っているお金の額は簡単に調べられる。
「キャッシュフロー計算書」という表に書いてある。
2.キャッシュフロー計算書に現金残高が書いてある
上の表は、私の持ち株でもあるシステムディのキャッシュフロー計算書だ。
2018年12月17日に発表された決算短信から取ってきたものだ。
字が小さくて見にくいが、一番下の欄を見てほしい。
「現金及び現金同等物の期末残高 732,391」という数字がある。
単位は(千円)。つまり7億3,239万1千円の現金が、平成30年10月31日時点で会社に存在した事がわかる。
つまり、システムディは7億3,000万円の現金を持っている。
3.借金は貸借対照表「負債の部」を見ればわかる
一方、借金はどのくらいあるか?
これは貸借対照表の「負債の部」に書いてある。
一番上に「流動負債」という項目がある。
ここにはシステムディが1年以内に支払わなければいけないお金が、緊急性の高いものから順番に書かれている。
支払手形及び買掛金 2億 243万円
短期借入金 0円
一年内返済予定の長期借入金 1億7,000万円
一年内償還予定の社債 0円
未払金 4,153万円
未払費用 1億1,994万円
この辺りまでを合計すると 5億3,388万円となる。
その後に続く「前受収益」は先払いで貰っているお金なので返す必要はない。
税金はすこしくらい待ってもらっても会社は潰れない。
「〇〇引当金」とは「〇〇が起きた時に払うお金を積み立てておきます」というお金なので、倒産とは関係ない。
というわけで、この辺りは無視していいだろう。
システムディは7億3,000万円の現金を持っている。
1年以内に支払わなければならない借金が5億3,388万円ある。
つまり1年間、1円も儲からなくても2億円ほど現金が残るわけだ。
潰れる心配がない事が理解できると思う。
4.四季報にも載っている
会社が持っている現金の額はとても重要だ。
だから四季報にもちゃんと載っている。
字は小さいけど、マーキングした場所に「現金同等物 16,792億円」と書いてあるのが読めると思う。さすが豊田自動車、現金だけで1.68兆円も持っている。
でも「四季報を見ればいいんだな」と思わないでほしい。
決算書を直接読む訓練は絶対に必要なのだから、今のうちに少しでも慣れていった方がいい。
5.まとめ
・現金が借金よりたくさんあれば会社は潰れない。
・現金と借金の額は決算書から読み取ろう。とても簡単だ。
・決算書の数字を読む訓練をすこしずつ続けよう。
次回、キャッシュフロー計算書についてもう少し続けます。
手元の現金がなくなった時、会社は倒産する
1.会社はそんなに倒産しない
はじめに書いておくが、会社なんてそんなに簡単に倒産しない。
現在、日本の上場企業は3,676社あるが、その中で倒産する企業は年間数社しかない。平成の30年間で倒産した上場企業は234社だ。
リーマンショックの影響で平成20年は33件の企業が倒産したが、それでも全体の1%にも満たない。自分の持ち株の企業が倒産したときは、その希少な経験を自慢してもいいくらいだ。
参考:平成の上場企業倒産(4月26日16時現在) : 東京商工リサーチ
そんなわけで、倒産なんて滅多に味わえるものではない。
持っている株が明日紙屑になるかもしれない、というのは株式投資をやらない理由としてはかなりズレている。
2.会社が倒産する理由
それでも時々会社は倒産する。一体なぜ倒産するのだろうか?
客が来なくなって商品が売れなくなったときに倒産するのか?
いやいや、商品が1つも売れなくても会社は倒産しない。
例えば、窪田製薬という会社がある。この会社の売上はゼロだ。まだ世の中に存在しない薬を開発している会社なんだけど、売るための薬が完成していない。
売り物がないから売上はゼロ、利益は当然マイナス。去年1年間で32億7,400万円の赤字を出している。
それでも会社は倒産しない。
借金が多くなったときに倒産するのか?
いやいや、借金なんていくらあっても会社は倒産しない。
例えば、誰でも知っているソフトバンクグループだが、その借金は15兆円近い。15兆円の借金を抱えているけど、潰れる可能性はほとんどない。
借金が多い企業ランキングトップ10!巨額負債を抱える会社はどこ? | お金のカタチ
倒産に至る過程はいろいろあるが、直接的な原因は1つしかない。
手持ちの現金がなくなった時だ。手持ちの現金がなくなった時、会社は倒産するんだ。
3.期限が守れない会社は信用されない
中学生が宿題や課題を期限通りに提出しないと、先生に叱られる。
学校で期限を守らなくても叱られるだけだ。しかし会社が「お金を◯月◯日までに支払います」という約束を破った場合、もう信用されなくなってしまう。
会社同士の取引は信用で成り立っている。信用されなくなった会社は、もう商売ができなくなる。
「お金を貸しても返してくれないかもしれない」「商品を渡しても代金を払ってくれないかもしれない」
こんな風に思われるので、もうだれも商品を売ってくれなくなる。銀行もお金を貸してくれなくなる。だから商売が出来なくなってしまうんだ。
お金を払う約束を破った時、その企業は倒産すると思っていい。
だから企業は「お金を◯月◯日までに支払います」という約束を絶対に守る。
逆にこの約束さえ守っていれば、企業は倒産しない。
つまりたくさん現金を持っていて、いつでもお金を払えるような企業は倒産しないんだ。
逆にいくらお客さんがたくさん来て商品がたくさん売れていても、手持ちのお金がなくなって支払いの約束が守れなくなった企業は、倒産する。
4.企業が持っている現金はどこで見ればいいか
というわけで、企業の倒産する確率を知るためには、企業が持つ現金の額を調べればいい。
それが「キャッシュフロー計算書」というところに書いてある。
次回はそのあたりを見ていきたい。
この本、面白かったです。倒産前にどのような事が起きるのか?
具体的な例を上げて説明されています。おすすめ。
「株なんて明日にでも紙屑になるかもしれない」
1.世にも恐ろしい株式投資
生活があまりにも忙しくて随分ブログを更新していなかった。
もう退場してしまったのではないか?
そんな風に思った読者の方も1人くらいはいるかもしれない。
でも更新していなかったと言っても2週間程度だ。そんな短期間に退場できるほどリスクは取っていない。明日からリーマン・ショック並の大暴落が起きたとしても、私が取っているリスク程度では退場できない。
最近、若い同僚からこんな事を聞かれた。
「二月堂さんって株やっているんですよね?持ってた株の会社が潰れた事ってあります?」
もちろんない。
会社なんてそんな簡単に潰れないし、決算書をちゃんと読んでいれば潰れる会社と潰れない会社くらい判断できる。
その若い同僚はFXをやっていた。FXをやるほど経済に興味があるにも関わらず、株式投資に対してそういう認識だったのだ。
世間一般の株式投資に対するイメージがよく実感できた。
「株なんて会社が潰れればただの紙屑になってしまう。そんな危険な事はできない。」
そう思っている人は、多分結構いるのだろう。
2.世にも恐ろしい料理
もちろん会社が潰れてしまえば、その会社の株は無価値になる。株券があった時代は潰れた会社の株でもちり紙交換に出せるだろうけど、現在の株は電子データだ。潰れた会社の株は紙屑にすらならない。
しかし株式投資を恐れるのは料理を恐れるのと同じだ。
料理は包丁で素材を切って、焼いたり煮たりレンジでチンしたりする。
料理に使う包丁も、火も、熱湯も、水も、マイクロ波も、全て人を殺すことができる。
それに比べて株式投資の安全なことよ。どれだけひどい目にあったとしてもお金がなくなるだけなのだから。
株式投資を恐れる人も、人を殺すことができる道具を使いこなしてご飯を作る。恐れることはなにもない。
料理も株式投資も、必要なのは「知識」と「技術」だ。
3.株式投資の安全性とは
これからしばらく株式投資の「安全性」について書きたいと思う。
上手な料理を作る方法じゃない。包丁で指を切り落としたり、家を燃やしたりしないための方法だ。
指を切り落としたら、美味しいごはんを作るどころじゃないだろう?
株式投資もおんなじだ。人生を棒に振るレベルの損をすると、儲けるどころじゃなくなるんだ。
株式投資の安全性は、やはり決算書を読むことで判断できる。
決算書を読めないのに株式投資をするのは、火が熱いことを知らずに料理を始めるようなものだ。
その昔、濡れたペットの猫を乾かそうと電子レンジでチンした人がいたそうだ。
決算書が読めない投資家は、多分その人を笑えない。
投資を楽しむために、まず指を切り落とさない方法を学んでいこう。
目の前のビッグチェンジに気付かないこと
1.医薬品、という商品
病院で出される「お薬」とは、とても変わったタイプの商品だ。
処方箋がないと買えない、医師の診察を受けてからじゃないと買えない、保険が効くので少なくとも7割引で買える。生活保護受給者はタダでもらえる。
そして何よりも、商品を選ぶ人とお金を払う人が別だという特徴がある。
薬を飲むのは消費者(=患者)だ。お金を払うのも(3割だけだが)消費者だ。
しかし薬を選ぶのは消費者ではない。選ぶのは診察した医者だ。
「選ぶ人とお金を払う人が別」
これはちょっと珍しいタイプの商品だ。
しかし医者の方も好き勝手に薬を選ぶことはできない。
この薬は2週間分までしか処方できない、この薬は90日分まで処方できる。この薬の投与量は1日〇〇mgまでだ。この病気にかかっている人しかこの薬を処方できない。
そういう訳のわからないルールが無数にある。それらのルールを踏まえながら、医者は薬を処方する。
2.ジェネリックという選択
薬代を払うのは患者だが、3割だけだ。薬代の残り7割は、保険という形で国が払っている。
いくら国にお金があると言っても薬はなかなか高価だ。医療技術は年々進化しており、治らない病気も治せるようになってきた。そして医療技術の進化とともに、医薬品もどんどん高価なものが出るようになってきた。
たとえば小野薬品工業の「オプジーボ」という薬がある。オプジーボは肺がんや悪性黒色腫の薬だが、1瓶で73万円する。これを2週間毎に投与するわけだが、そうなると1年で約3,500万円かかってしまう。参考:高額薬剤と医療費 | 日本歯科大学校友会
ただでさえ高齢化が進んで病院に行くお年寄りが増えてきている。患者の数が増えて、一人あたりにかかる薬代も上昇している。その結果、日本の医療費は毎年約1兆円ずつ増えてきている。
そろそろヤバい、マジでヤバい。そんな風に国が考えるのは当然だ。
そんな流れで「ジェネリック医薬品」というものが強力に推められるようになった。
ジェネリック医薬品とは何か?
薬を開発するのはとても大変だ。長い研究開発期間と莫大な開発費がかかる。でもすごく良く効く薬が完成すれば、とても儲かる。その薬を売ることができるのは、その薬を開発したメーカーだけなのだ。完全に独占販売となるわけだから、値段もお高めにつけることができる。
しかし、独占販売ができるのは特許が切れるまでだ。莫大な開発費をかけても、20年から25年経てば特許が切れる。特許が切れたあとは、他の会社がその薬を作って売ることができる。
特許切れした後に他社が製造した医薬品のことを「ジェネリック医薬品」と呼ぶ。
ジェネリック医薬品の製造には「莫大な開発費」がかからない。だからこそジェネリック医薬品メーカーは薬を安く売ることができる。
3.ジェネリック普及という国策
ジェネリック医薬品を使えば、医療費を安く抑える事ができる。
しかし日本ではジェネリック医薬品の導入は遅れていた。かつてジェネリック医薬品は1割り程度しか使われていなかった。(ほぼ)同じ効果のもっと安い薬があるのに、高い薬が使われていたんだ。
すこしでも医療費を下げてたい国は、国策としてジェネリックを強力に推進した。
具体的な話をすると長くなるので省略するが、その手口はえげつないほどだった。ジェネリックを使わないと病院が立ち行かないほどに、保険の制度を変えたんだ。
その結果、10年ほどでジェネリック医薬品のシェアは激増した。
2018年9月には数量ベースで72.6%まで伸びた。
私は医療関係者なので、その変化を身をもって体験していた。
4.それがビッグチェンジだろ!!
ジェネリックへの移行、という医療業界の変化を直に体験していた。
しかしそのビッグチェンジは見逃していた。
世の中にはジェネリック医薬品専門メーカーという企業が存在する。
これは沢井製薬のチャートだ。
ゆっくりとだが確実に、株価は伸びている。気がつけば10倍以上になっている。
国が「2017年までにジェネリック医薬品を70%以上にする」と決めていたんだ。この数値が達成されれば、沢井製薬の売上がどのくらいになるか計算できる。
そして国は、法律を変えてこの目標を達成させるという力がある。
沢井製薬の成長は約束されていたんだ。
ただ、それに気付くだけでよかったんだ。
5.まとめ
目の前のビッグチェンジに気付かなかった。
それは、とても悲しい。
テンバガーはまず身の回りから
1.ビッグチェンジを起こした企業を探そう
買った株が10倍以上に値上がりするテンバガー。
誰もがテンバガーに憧れる。わたしも憧れている。
そんな素敵なテンバガー、いったいどうやって見つければいいか?
という話の続きを今回書きます。
テンバガーのタイプを3つ書いたが、その中の2つ目「ビッグチェンジを起こして落ち目だった会社が再成長するタイプ」の見つけ方について考えてみたい。
2.ビッグチェンジに気づくタイミング
過去のテンバガーを見つけるのは簡単だ。ネットでチャートを見ればすぐに分かる。株価が上がっていく株は常にある。
しかしこれから上がる株を見つけるのは難しい。株価が上がる前にそれに気づくのが難しいんだ。ほとんどの人は、株価がすごく上がって話題になった頃にその銘柄に気づく。そして「あの時買っていれば・・」と妄想する。あるいは高値の株に飛びついて大怪我する。
誰もがその株の良さに気付いてしまえば上昇はそこで終了。売りたい人より買いたい人が多くないと、株価は上がらない。まだその株の良さに気付いていない人、気付いた後に買ってくれる人が居なくなれば、株価はそれ以上上がらない。
だからなるべく早くその株の良さに気付かなくてはいけない。
どうやって早く気付けばいいか?
何らかのビッグチェンジが起きて株価が上がるときはこんな流れになる。
例として、モンスターストライクの大ヒットで復活したミクシィを上げる。
① ミクシィがモンスターストライクをリリースする
② 実際にプレイすると面白いという事がわかる
③ スマホゲームユーザーのなかで話題になる
④ モンスターストライクのダウンロード数が増える
⑤ ミクシィの売上と利益が増える
⑥ 売上と利益が上昇していることが決算書等で発表される
⑦ 四季報にも売上と利益が上がっている事が掲載される。
⑧ 決算書の発表を受けて株価が上がる
⑨ 株価が上がっていることに投資家が気づく
⑩ 気付いた投資家が株を買うので更に株価が上がる
⑪ 次の決算でも更に売上と利益が増えていることが発表される
⑫ 更に株価が上がる、マネー雑誌などにも取り上げられる。
⑬ ⑨に戻る。上昇のループが始まる
決算書を読みまくっている投資家は⑥で気づくんだろう。四季報を読み込んでいる投資家は⑦で気づく。
ほとんどの投資家は⑨で気づく。でも1周目の⑨で気付ける投資家はほとんど居ない。⑫から⑨のループを何周かして、それなりに上昇したところでようやくその銘柄に気づく。
下手な投資家はループが何十回も回転して、それ以上上がらなくなる頃に買う。その頃になると儲けは少なく、リスクは高くなっている。
3.好きなことはなんですか
早く気付けば気づくほど、上昇する株を安く買える。
だからこそ熱心な投資家は決算書を読みまくり、四季報を熟読する。
しかしそれをやるのは大変だ。毎号四季報を通読する投資家なんてほんの一握りだろう。早く気づくのはとても大変だ。
しかし、スマホゲーム愛好家はどうだろう?
③ スマホゲームユーザーの中で話題になる
この段階で気づくんじゃないだろうか?
「モンストは面白い。これは流行る。リリースした会社は・・・ミクシィだ!上場してる会社じゃないか!決算書の内容も悪くない。しかも安くなってる!!買いだ!!!」
そうやって目の前に落ちている宝に気付き、それを拾うことができる。
4.得意分野を持つということ
私はゲームをほとんどやらない。だからモンスターストライクがどんなゲームかも知らない。その私が、モンスターストライクというビッグチェンジに早く気づくことはできない。
一番早く気付くことができるのは、スマホゲームのユーザーだ。
株の世界ではこのような話がよくある。
誰にでも1つや2つ、趣味や得意分野があるだろう。趣味や得意分野で大きな変化が起きれば、それは誰より早く気付くことができる。
仕事をしている人ならその業界に詳しくなる。その業界以外の人には絶対わからないような事情も当然のように知ることができる。それは明らかなアドバンテージだ。
変化に気づけば、あとは企業を調べるだけ。目の前に落ちてきたお宝を吟味して、ただ拾うだけでいい。自分の身に起きた幸運を噛みしめながら。
まずは身の回りを見よう。
青い鳥ではないが、幸せとテンバガーが自分の生活の中に見つかるかもしれない。
← 私がもっとも影響を受けたピーター・リンチの代表作。
今回の内容と同じようなことも書いてあります。
投資家なら絶対に読むべき本です。
テンバガーの3つのタイプ
1.ビッグチェンジとテンバガー
ネコが女の子に化ければ不良も思わず更生してしまう。そんな「ビッグチェンジ」が起こった会社を買えば儲かるよ。だけどどうやってそんな会社を探せばいいんだろう。
そんなところで前回の話が終わった。
今回はその続き。
だけど探し方について書く前に、まずテンバガーのタイプについて書くことにする。
2.テンバガーの3つのタイプ
買った株が10倍にまで値上がりする「テンバガー」。
非常に残念なことに、私はテンバガーをつかんだことはない。せいぜい4倍くらいだ。
ここ1年ほどは、1.5倍から2倍にも増えれば御の字だ。以前ほど気持ちよく上がってくれる株が少なくなってきている気がしている。地合いによってテンバガーが狙えるときと、狙ってもうまく行かないときがある。今はテンバガーは狙いにくい地合いなんだろう。
テンバガーとなる会社は3つのパターンに分けられる。
① 上場したばかりの時価総額が小さな会社が成長していく
② 落ち目の会社がビッグチェンジを起こして再成長する
③ 誰もが潰れると思っていた会社が生き残る
これ以外にもあるのかもしれないけど、 私が思いつくのはこの3つだ。
3.上場したばかり時価総額が小さな会社が成長していくタイプ
このパターンはわかりやすい。ちょっと前に例を上げた「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングスが良い例だ。
店舗数が増えて、売上と利益が伸びる。それに伴って市場での評価も上がる。そのうちアークランドサービスHDはテンバガーを達成した。
これが成長株投資の王道だろう。
「もともとは時価総額が低い小さな会社だった」これがポイントの1つだ。
小さな会社だからこそ、大きく成長することができる。
例えば大企業の代表であるトヨタ自動車。本日の時価総額は22兆6,974億円だ。
このトヨタ自動車の売り上げと利益が5倍になり、それに伴って時価総額が440兆円になることは多分、ない。
上場したばかりの「小さな会社」と書いたのはそれが理由だ。小さいからこそ大きく成長する余地があるんだ。
4.誰もが潰れると思っていた会社が生き残るタイプ
②を飛ばして先に③を見てみよう。
「誰もが潰れると思っていた会社が生き残る」
代表的な例は「アイフル」だ。
アイフルは消費者金融の企業だ。「お金があまりない人や給料日まで待てない人に数万円から数十万円のお金を貸して、それなりの金利をとる」というのがビジネスモデルだ。
ペットショップでチワワと出会ったしまったサラリーマンが、チワワのためにアイフルに行く。かつてはそのような恐ろしいアイフルのCMが放送されていた。
ペットを飼うために消費者金融から借金をするなんて、正気ではない。
正気じゃない人を相手にしたビジネスは、途中でうまくいかなくなる。
アイフルの2006年から2016年までのチャートだ。
アイフルは「借金の取り立てが暴力的すぎる」と訴えられたり、「グレーゾーン金利」の問題があったりして業績が悪くなった。2010年度には3,000億円程度の赤字を出した。誰もがアイフルは潰れると思った。4,000円以上あった株価は20円まで下がった。
しかし潰れなかった。
潰れない事がはっきりすると、20円の株価は2年ほどで829円まで上昇した。なんと41倍の上昇だ。20万円投資していれば829万円になっていたわけだ。
しかしこのパターンはなかなか難しい。潰れるかもしれない、という会社の株を買うのは勇気がいる。決算書を読み込むくらいでは決して足りないだろう。とてもじゃないけど初心者にはおすすめできない。
5.落ち目だった会社がビッグチェンジを起こして再成長するタイプ
この例は前回あげたミクシィだ。
運営していたSNSの利用者がどんどん減少し、売上も株価も下がり続けていたミクシィ。
しかしモンスターストライクの大ヒットで、株価は宇宙ロケットのように空高く舞い上がった。
チャートだけで十分。解説は不要だろう。
6.まとめ
上がっていくチャートを見るのは楽しい。
自分が持っている株のチャートだった場合、その楽しさは何十倍にもなる。たぶん。
そんな楽しさを味わってみたくないか?
私は味わいたい。
テンバガーが起きるパターンはだいたいこの3つだ。
その見つけ方について、次回から考えていきたい。