中1の息子に教える株式投資の始め方

40代の兼業投資家です。2019年の秋に株式投資を始める予定の息子「くま」に、投資の心構え、決算書の読み方、ビジネスモデル等をやさしく教えます。

マークラインズの第2四半期の業績予想をしてみた

 

カーディーラーのイラスト

1.決算間近のマークラインズ

決算シーズンがやってきた。

私の主力銘柄であるマークラインズは、8月2日に第2四半期の決算を発表する。

マークラインズは12月決算なので、今回の第2四半期決算は1月~6月までの半年間の業績が発表されることになる。

 

前回の記事の最後に「次回予告」なんてものを書いてしまった。

 

企業が出してくれる情報は大事だよ。特に月次を出している企業への投資は、月次から業績を読むことが最低条件だよ。みんなやっているんだから、それすらやらないのは、負け組投資家一直線だよ。

やり方がわからない初心者のために、具体的なやり方を次回書くよ。ちょうどマークラインズが決算だからね。マークラインズの月次から次の決算の内容を予想してみるよ。

すぐ答え合わせができるから、楽しみだね。

 

そんな内容の次回予告だ。

 

 

マークラインズは毎月の月初めに『「情報プラットフォーム」契約企業数の月次推移に関するお知らせ』というIRを出している。どのくらいの企業がマークラインズの情報プラットフォームの有料会員として登録されているのか?それを毎月教えてくれるのだ。

今回、そのデータを元に、具体的な決算の数字を予想してみる。

 

あんまりかけ離れた数字を出すと、ほとんど居ない読者がさらに居なくなるかもしれない。下手くその書いたブログなど読む価値はない。

それどころか、息子の私に対する信用も落ちてしまうかもしれない。それは大変だ。

 

それなのに前回、そんなチャレンジングな記事を書くという予告をしてしまった。

というわけで今回、火中の栗を拾ってみる。

 

 

2.マークラインズの月次と売上

マークラインズが発表している月次はこんなのだ。

 

f:id:nigatsudo:20190730211427p:plain

 

今回の決算期間は1月から6月の半年間だ。6月末の契約企業数は、上の表にもある通り3,080社だ。

一方、3月末の契約企業数は2,982社だ。3ヶ月間で98社増えたことになる。

 

 第一四半期、つまり1月~3月の3ヶ月間の実績は発表済みだ。

情報プラットフォーム事業は、売上が420百万円(前年同期比10.4%増加)、営業利益が228百万円(前年同期比13.6%増加)だった。

この数字に4月から6月までの3ヶ月分を足せば、今回発表される売上になる。

 

マークラインズのサイトを見ると、情報プラットフォームの1ヶ月あたりの料金が書いてある。利用人数が2人までは1ヶ月4万円、4人までは5万円、、、11人以上なら10万円だ。また「ものづくり企業支援パッケージ」というコースなら、1年間48万円で10人まで利用することができる。

かなり値段のばらつきがある。企業数だけではきちんとした売上がでなさそうだ。

 

というわけで足し算はやめて、かけ算でいく。

3月末の契約企業数は2,982社、6月末は3,080社。3ヶ月間で98社増えたわけだが、割合としては3.28%増加だ。

情報プラットフォームの1月~3月の売上が420百万円だった。だから4月~6月までの3ヶ月間はそれに1.0328をかけて433.7百万円と予想する。(A)

 

 

3.為替変動の調整

情報プラットフォームの契約企業数3,080社のうち、国内企業は1,658社だ。国内と海外の割合はほぼ50%ずつだ。

海外での売上が多い場合、為替の動きが関係してくる。1ドル=100円のときと1ドル120円のときでは売上高が変わる。

1,000ドルの売上は、1ドル100円なら日本円で10万円。1ドル120円なら日本円で12万円となる。同じ1,000ドルなのに、2万円も売上高が変わってしまうのだ。

 

1月1日から6月31日までの日本円と米ドルの動きを見てみる。

f:id:nigatsudo:20190731181621p:plain

5月の後半からちょっとだけ円高傾向にあるようだ。

グラフを眺めて、ざっくり2%ほど円高になったと仮定する。

 

円高になると、日本円換算で売上が下がってしまう。約50%の海外の売上高が日本円換算で2%下がるとすると、全体では1%売上高が減少する。

前節で出した4月~6月の売上である433.7百万円(A)から1%を引くと、429.3百万円になる。

 

これに1月~3月までの420百万円を足して、1月~6月の第2四半期の情報プラットフォームセグメントの売上は849百万円と計算できる。

前年度の第2四半期の情報プラットフォーム事業の売上が769百万円だったから、前年同期比+10.4%だ。

 

 

3.情報プラットフォームセグメントの利益予想

利益は売上ほど簡単に予想できない。

なぜなら、経費をかけると利益は簡単に下がってしまうからだ。

 

 でも、パン屋なら売上が上がる時は材料費も上がるが、情報はたくさん売っても材料費はほとんど上がらない。その点は売上以上に利益が上がる商売なので、株主としてはとてもありがたい。

しかし、情報プラットフォーム事業に新入社員がたくさん配属されたりすると、利益は下がる。

 

いろいろ考えてもわからないので、これまでの発表を参考に予想してみる。

決算短信にセグメント情報を載せ始めた2017年2Q以降の、情報プラットフォームセグメントの売上高の増加と営業利益の増加を一覧表にしてみた。

数字は全て対前年同期比だ。

 

2017年2Q 売上高 +12.4%  営業利益  +11.8%  

2017年3Q 売上高 +13.6%  営業利益  +13.1%

2017年4Q 売上高 +13.3%  営業利益  +15.7%

2018年1Q 売上高 +16.1%  営業利益  +33.1%

2018年2Q 売上高 +15.0%  営業利益  +25.0%

2018年3Q 売上高 +13.9%  営業利益  +18.7%

2018年4Q 売上高 +12.5%  営業利益  +14.3%

2019年1Q 売上高 +10.4%  営業利益  +13.6%

2019年2Q 売上高 +10.4%  営業利益   ?

 

 

私は明日発表される第2四半期の売上高が849百万円、前年同期比 +10.4%と予想した。これは対前年同期比で2019年1Qと全く同じだ。

というわけで、2019年2Qの情報プラットフォームのセグメント営業利益は、2018年2Qの340百万円の+13.6%、386百万円と予想した。

 

結論:

情報プラットフォームセグメントの

売上は849百万円、営業利益は386百万円と予想する。

 

 

こっちもやっぱり大した計算はしていない。

 

それでもやる人とやらない人の差はとんでもなく大きい。こんな簡単な計算すらしないで大事なお金を投資するなんて、どうかしてるぜ。

などと思う。

 

 

4.「その他の事業」は次回

マークラインズの柱は「情報プラットフォーム事業」だ。安定したキャッシュを産み出す金のなる木だ。

 

しかし、マークラインズには「その他の事業」というセグメントもある。

こっちの予想は月次を出していない。だから予想は情報プラットフォーム事業よりずっと難しい。

 

その点について、次回書きます。

あと1日しか無いので、かけなかったらごめん。

 

 

あ、もちろんこれは私の個人的な予想です。

計算の過程(の一例)を示しただけです。計算間違いもしてるかもしれない。

これを信じて投資しても、損をした場合は自己責任ですよ \(^o^)/

 

 

 

さあ決算だ。その前に業績を読もう!

落語家のイラスト(上方)

1.業績を読もうとする投資家

その企業の商品やサービスがいっぱい売れる。売上が伸びて利益が増える。お金がどんどんその企業に入ってくる。

そうなると株価が上昇する。

 

企業が存在する目的は「お金を稼ぐこと」だ。それ以外にも企業の役割はあるが、お金を稼ぐことが最も重要だ。お金を稼ぐことができない企業は、いずれ潰れる。

だから企業の売上や利益などの業績が、企業の価値を決める。

業績がどんどん良くなっていく企業は、その株価もどんどん上昇する。

 

そんな企業にお金を投資するのが株式投資家だ。

よって、株式投資家は企業の未来の業績を読む。少なくとも読もうと努力する。

未来の業績が良くなると考える投資家が増えれば、株価は上昇する。

 

投資家の予想は「決算発表」という形で答え合わせがされる。

投資家の予想より決算の結果が良ければ、株価は上昇する。

「投資家の予想している数字」と、「企業の未来の業績」。この2つを正確に知ることができれば、とても手堅く儲けることができる。

だから株式投資家は「企業の業績」と「他の投資家の予想している数字」を読もうとする。

 

今回は、まず「企業の業績」について。これをどうやって読むかという話を書いてみる。

  

 

2.月次すら押さえずに投資する?

投資家が業績を予想するための方法はいくつかある。

 

売店や外食産業などは、月次(げつじ)を毎月発表する企業も多い。有料会員数の変化を定期的に発表している企業なんかもある。

そんな投資家への情報発信がちゃんとできている企業の株は買いやすい。

問題は、誰でもかんたんに入手できる情報では、知っていても有利にならないことだ。

そして簡単に入手できる情報すら知らないのであれば、とんでもなく不利な立場に立たされる。

 

月次すら押さえてないのに投資するなんて、地図もナビも持たずに見知らぬ土地を運転するようなものだ。どちらが早く目的地に到着できるか、考えなくてもわかる。

投資の世界でそんな事をすれば、誰より早く退場することができるだろう。

 

 

3.業績予想のための情報収集の方法あれこれ

月次以外にも需要な情報はたくさんある。

 

海外との取引が多い企業は、為替の変動が業績に大きく影響したりもする。

実際に店舗に行って客の入り方を確認したり、ネット上で口コミを集めたり、直接自分でサービスを体験して品質を確かめたり。そうやって足をつかって情報を集める方法もある。

 

私は転職サイトなんかを使って従業員の職場環境を探ったりする。従業員のやる気は業績に反映するんだ。ブラック職場の「使い捨て社員」が、モチベーションを持って働いて企業の業績を上げてくれるとは思えない。

 

その業界について少しでも知るために、業界の雑誌を読んでみるのもいい。図書館に行くと「こんな業界誌があるのか!」と驚くほどマニアックな雑誌が置いてある。

そんな雑誌を読めば、業界全体の流れをなんとなく感じることができるだろう。

 

それでも企業の外で情報を集めるのは限界がある。

やっぱり中で働いている人のほうが情報を集めるには有利だろう。客の入り方とか、売れ筋の商品とか、意識しなくても情報が入ってくる。

学生ならいっそのこと、バイトで職場に潜り込むっていうのも手だと思う。株を買う前に、企業で働いてみる。

そこまでできる人は、きっと何をやらせても上手くいく可能性が高いだろう。

 

そうやって情報を集めながら、投資家はなんとか業績を予想しようとする。

それでも業績予想はなかなか当たらない。

 

 

4.会社の社長ですら業績は読めない

 多くの企業は「来季予想」というものを発表している。

「次期の業績は、売上が〇〇億円で営業利益が▲▲億円となる見込みです。」

そんなような文章を見たことがあるはずだ。

 

来季予想は、誰よりもその企業に詳しいはずの中の人が今までのデータを元に作っている。きっと経営陣しか知り得ない情報なんかも踏まえて、来季予想をつくっているはずだ。

でもこの来季予想はほとんど当たらない。

「上方修正」や「下方修正」などの、業績修正はしょっちゅう発表されている。 

 

 ちょっと調べたら、過去半年間(2019年1月31日~7月30日)で業績予想を修正した会社は、のべ629社もあった。

 

 「下方修正なんかしたら失望されて株が安くなる。それなら最初から低めの数字を出しておいたほうがいい」

そんな事を考えている会社も多い。だから本当の予想より低い数字を「来季予想」として発表する。だからこそ業績修正が多いのかもしれない。

それなら下方修正なんて、もっと少なくても良さそうだが。

 

末端の社員よりずっと会社の事をよく知っている会社の経営陣すらそうなのだ。

よくわかっていない外部の人が、業績を予想してもなかなか当たらない。

 

 

 5.当たらなくても業績は読もう

 それでも業績を読む努力は重要だ。

一番最初に書いたが、誰でもやっている努力をやらない投資家は、お金を失ってしまう可能性がとても高い。

誰でもやっている努力にプラスして、自分でいろいろ調べる。それでも業績予想なんてなかなか当たらない。

 

でも、当たらなくても読み続けよう。

そういう努力だけが、お金持ちへの扉を開く可能性を高めるんだ。

 

 

6.次回予告!

次回、月次をつかっての業績の読み方を書いてみます。

持ち株であるマークラインズについて、業績予想をします。

 

決算発表は8月2日。その時に答え合わせができますね。

  

 

 

成長株の株価とシラスウナギの値段

 

マッチ売りの少女のイラスト

1.シラスウナギの値段

さて、土用の丑の日となった。前回書いたようにうなぎを食べる予定はない。

でも、今日はうなぎの養殖の話の続きを書いてみたい。

 

 

上の記事に書いたとおり、うなぎの稚魚であるシラスウナギは1kgあたり180万円から360万円もするらしい。こんなに高い値段で取引される食用の魚類が他にいるのだろうか?

このような値段がつくのは、シラスウナギがうなぎに成長するからだ。

きちんと管理して育てれば、1匹0.2gのシラスウナギが200gから300gまで大きくなる。シラスウナギそのものを食べる話は聞いたことがない。シラスウナギの価値は「うなぎに成長する可能性」に付けられている。

 

養殖の環境下において、シラスウナギが出荷できるサイズのうなぎに成長する可能性は50%程度らしい。約半分の確率で、0.2gのシラスウナギが200gまで大きくなる。

そしてうなぎのサイズは決まっている。1匹のシラスウナギが100kgのうなぎに成長することはないし、100kgに成長したところで高く売れることはない。

更に、シラスウナギが200gのうなぎに成長する期間も決まっている。12月から1月に養殖池に入れられたシラスウナギは、次の年の7月にはもう出荷できる。たった半年で1,000倍の大きさになってくれるわけだ。

そんなわけで、うなぎの養殖が儲かるかどうかは私のような素人でもある程度計算することができる。シラスウナギの値段と、その成長の期間、うなぎに成長する確率、出荷時のうなぎの値段を計算すればいい。

うなぎの養殖は儲からない、というのが結論だった。 

 

 

2.成長株の株価

 一方、企業についてはどうだろう?

小さな企業の株を買って、成長するのを待つのは株式投資の醍醐味だ。そのような投資方法を「成長株投資」というが、成長株投資こそが投資の王道だと思っている。私のポートフォリオも、ほとんどが小さな企業で占められている。

 

というわけで、うなぎの養殖と同様に企業への投資が儲かるかどうか考えてみよう。

現在の企業の値段と、その成長期間、成長する確率、将来の企業の値段を計算すればいい。

現在の企業の値段は、うなぎの養殖におけるシラスウナギ値段に相当する。企業の値段は、言うまでもなく現在の時価総額の事だ。

その値段で買った企業がどのくらい成長するか、成長するまでどれだけの期間がかかるか、成長する可能性はどのくらいか、成長した企業の株がどれくらいの値段で売れるのか。そういうことを考えて、現在の株価が高いか安いかを判断する。

 

しかし、うなぎと違って企業の成長は先が見えない。

10年経っても全く成長しないかも知れない。成長するにしても、20年かけて1.5倍にしかならなかった、では話にならない。その間に環境が変わって潰れてしまうかもしれない。成長した後の株価も想像がつかない。

 

 

 3.成長株の原価計算

うなぎの養殖を始めるにあたって、原価計算は絶対必要だ。1kgのシラスウナギをどのくらいの歩留まりで育てれば何百万円になるのか?そういう事をシュミレーションした後で無いと、職業としての養鰻家は成り立たない。

 

同じように、成長株の投資も原価計算が必要だ。

その企業がどのくらいまで成長するのか?成長する可能性はどのくらいなのか?うまく行った場合の5年後の売上と利益はどのくらいか?うまく行かなかった場合はどのくらいなのか?うまく行ったときの株価はどこまで伸びるのか?うまく行かなかった時は株価はどうなるか?成長が順調かどうかは何を見て判断するのか?

 そのような「成長株投資の原価計算」をする必要がある。

 

もちろん先のことはわからない。その企業の経営者ですらわからないくらいだ。外野の投資家が将来の姿を正確に判断するのはとても難しい。

 

 それでも、成長株投資をするなら絶対にやるべきだ。たとえ予想が外れても、何も考えずに投資するより何万倍も意味がある。考えた末に予想を外した場合、それは本人の実力のための肥やしになる。

考えもせずに失敗した場合、それは犬も食わないような「ただの無駄」だ。

 

 

4.成長株の株価と妄想

シラスウナギの値段が例えば1kgあたり600万円になった場合、養殖業者が儲かる可能性はとても少ない。1匹も死ぬことなく出荷できるうなぎまで成長したとしても、1kgのうなぎは1,000kgにしかならない。過去最高値である2019年6月うなぎの卸売価格の5,739円で計算しても、1,000kgのうなぎは573万9,000円だ。既に赤字になっている。そこから更にエサ代や光熱費や設備の減価償却や人件費が引かれる。大赤字だ。

 

しかし、成長株には時々そんな値段がつく。毎年40%づつ成長してもその株価は正当化されないんじゃないか?というような株価が付くことがある。

たしかに企業の成長はうなぎの成長と違って天井がない。

それでも、どう考えても割高だろうっていう成長株も存在する。

 

その割高な株価を支えているのは「妄想だ」。Amazonのように、数年後に株価が100倍になることを夢見るわけだ。

妄想は、マッチ売りの少女が見た幻覚と同様に、マッチの火が消えるまでのような短い時間で消滅する。妄想に支えられていた株価は、支えを失って自由落下する。

 

妄想が産まれる直前にその株を買っておくのが一番いいんだろうけど。マッチ売りの少女がマッチを取り出した瞬間に、妄想が産まれることを予測して株を買う。妄想がひろがって株価が急騰した時にサッと売り払う。

ああ、そんな投資家にあこがれる。

 

でも、できないことを望んでも儲からない。まずはできることをやっていこう。

成長株の原価計算についての自分なりの方法を、いつか書いてみたい。

 

 

 

8月にスイカを買って、2月に売れ

 

うなぎの蒲焼のイラスト

1.土用の丑の日とうなぎ

明日、7月26日は「土用の丑の日」だ。

ますます暑くなるこの季節に夏バテ対策としてうなぎを食べる、という風習が広まったのは江戸時代だ。「玄米と味噌汁と漬物」という食生活をしていた江戸時代の人にとって、夏前に栄養価の高いうなぎを食べることは大きな意味があったのだろう。しかし現在においては、そのような栄養学的な価値はもう無くなっている。

 

うなぎは美味しいので、令和の時代になってもその風習は続いている。うなぎよりずっと安価で栄養価の高いものはたくさんある。夏バテ対策のためだけなら、わざわざ高いお金を払って絶滅危惧種であるうなぎを食べる必要はない。

美味しいから食べているだけだ。

 

もちろん私は投資家なので、土用の丑の日にうなぎを食べたりしない。

投資家なんだから当然だ。

 

土用の丑の日にうなぎを食べる」という習慣があるから、うなぎは7月が一番高い。欲しがる人が多い時は、値段が上がる。これは、うなぎでも株でもおんなじだ。

 

f:id:nigatsudo:20190723183132p:plain

 

 

2.ケーキの旬

私はケーキが好きだ。

ケーキが一年で一番まずくなる日を知っているだろうか?

 

12月24日だ。

12月24日はクリスマスイブだから、多くの家庭でクリスマスケーキを食べる。1年で一番ケーキが売れる日だから、ケーキ屋はたくさんのケーキを作る。12月23日ではまだ早い。12月25日では遅すぎる。24日に合わせて、大量のケーキを売ることになる。

もちろんケーキ屋のスタッフも設備も限られている。普段の何倍ものケーキを作るような余裕はない。23日以前からケーキを仕込み始める。スポンジの部分を先に大量に作っておいたり、ケーキの飾り付けの部品を揃えておいたりする。スポンジケーキは冷凍保存も可能だ。10月から「クリスマスケーキ」の製造を始める工場もあるらしい。

 

そんなわけで、12月24日のケーキが一番不味い。パンもケーキも作りたてが一番うまいんだから。まあ高くても不味くても、クリスマスイブに食べる意味があるということくらいは知っているけど。

 

 

3.スイカは2月に売れ、8月に買え

ありとあらゆる食べ物には「旬」がある。

イカの旬は7月と8月だ。2月に食べるスイカは希少価値があるかも知れないが、美味しいのは間違いなく7月と8月だ。

そしてスイカが安いのは8月だ。東京卸売市場でのスイカの値段は、2月が341円/kgなのに対し、8月は182円/kgだ。

参照:すいか(スイカ:西瓜)の値段[価格]の相場と旬や栄養成分は? | おかずキッチン

 

もしスイカ農家なら、なんとかスイカが高い時に出荷したい。値段が高い時に売れば儲かる。

イカを安く買って食べたいのなら8月がいいだろう。安く、美味しく、たくさん食べることができる。

 

 

イカを8月に買って3月に売れば儲かる。

でもスイカは腐るので、そんなことは不可能だ。

 

株も、安い時に買って高い時に売れば儲かる。

そして株は腐らない。企業の価値が変わらない限り、ずっと持っておいても大丈夫だ。

イカの価値は、2月も8月も変わらない。でも「希少価値」のおかげで、冬になると価格が上がる。価値は同じだけど、価格だけが上がるんだ。

 

価値と価格は別物だ。

企業の値段である「株価」は日々変化する。でも、同じ企業なんだから「企業の価値」はそんなに簡単には変化しない。

同じ価値なら、安い時に買うほうがお得だ。そうやって安い値段で買っておけば、価格が上がった時に売って儲けることができる。

 これは「バリュー投資」という考え方なんだけど、安く買って高く売るのは全ての投資の基本だ。

だから株を買うときにはちょっと立ち止まって考えたほうがいい。

「自分は、2月のスイカを買おうとしているんじゃないだろうか?」と。

 

 

4.まとめ

わたしは投資家なので、土用の丑の日にうなぎは食べない。

まあ、年中食べてないんですけどね。

 

 

 

うなぎの養殖と成長株

 

うなぎのイラスト(魚)

1.うなぎの稚魚

うなぎの研究をしていた友人がいる。

ご存知の方も多いと思うが、うなぎの生態は実に複雑だ。うなぎは、フィリピン近くの太平洋で産卵する。そこで孵化した稚魚がわざわざ日本まで泳いでくる。日本まで泳いできた後、淡水にも住めるように体を作り変えて河川を遡上する。そこで大きくなって、我々の口に入るようなうなぎになる。大きくなったうなぎは再び海に下り、フィリピン近くまで泳いでいく。そんな遠くまで行って、深い海で産卵する。

 

そんな複雑な生態をもつうなぎだから、完全養殖は難しい。水槽やいけすでは、うなぎに卵を産ませるのが困難なんだ。冒頭に出てきた「うなぎの研究をしていた友人」は、完全養殖のための研究をしていた。

研究室レベルでは「うなぎー卵ー稚魚ーうなぎ」のサイクルを回すことはできるようになった。でも商売として成り立つほど、低コストでうなぎの完全養殖はできない。

 

現在のうなぎの養殖は、「うなぎの稚魚をつかまえてきて育てている」だけだ。

その稚魚は、野生のうなぎが産んだ卵から産まれている。野生のうなぎの減少と共に、うなぎの稚魚も減少している。

 

 

2.うなぎ養殖事業の分析

うなぎの稚魚は「シラスウナギ」とよばれる。シラスのように白くて細いからだ。

このシラスウナギ、漁獲高の減少によって価格が高騰している。kgあたり180万円から360万円もするらしい。数年前は20万円~30万円で取引されていたようなので、ずいぶん高くなっている。

参照:ウナギ稚魚、今年も少なく 取引価格は前月比4割高 | 八ッ場あしたの会

 

養殖業者はシラスウナギを買ってきて、育てて売る。シラスウナギは1匹0.2gくらいなので、1kgで5,000匹だ。0.2gのシラスウナギを、1年かけて200gから300gに育てる。だいたい1000~1500倍くらいになるわけだ。

 

f:id:nigatsudo:20190723183132p:plain

上のグラフの通り、2019年6月うなぎの卸売価格がで5,739円だ。

1kgのシラスウナギを200万円で購入したとしても、1,000kgに育ったうなぎを574万円で売ることができる。

 

でも実際はシラスウナギが成魚にまで成長する割合は、うまくやっても50%程度らしい。半分が死んでしまえば、1kgのシラスウナギは500kgのうなぎにしかならない。そうなれば287万円だ。それに加えてエサ代も設備代も人件費もかかる。

 

うなぎの養殖って全然儲からないじゃないか・・。

これは、今後うなぎの値段が間違いなく上がるな・・。

 

参照:日本うなぎ情報 | 浜名湖うなぎ直売/山重養魚場

 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/235649.pdf#search=%27%E3%81%86%E3%81%AA%E3%81%8E+%E9%A4%8A%E6%AE%96+%E6%AD%A9%E7%95%99%E3%81%BE%E3%82%8A%27

 

 

3.成長株を買うということ

前振りのつもりだったんだけど、大規模に脱線してしまった。

このブログは株式投資のブログです。

 

いったいどうしてこんなに長々とうなぎの養殖について書いたのか?

「成長株を買うということは、シラスウナギを買うことだ」

これが言いたかった。

 

どんな大企業も、はじめは小さなベンチャー企業だ。小さな企業が無数の苦労を重ね、運と顧客に恵まれ、成長していくことで大企業になっていく。

 ほとんどのベンチャー企業は、大きくなる前に消えていく。上場までこぎつける企業はほんの一部だ。でも、上場したあともちゃんと成長し、大きくなる企業は存在する。

 

企業が成長すれば、株価は上がる。それを想像して投資家は株を買う。

高いお金を払ってシラスウナギを買う養鰻家と同じだ。

 

シラスウナギは半分弱がうなぎになる。

ベンチャー企業が大企業に成長する可能性は、それよりずっと少ない。

それでも成長株は夢がある。いつかグーグルやアマゾンのような巨大企業に成長して、株主に多大な恩恵をもたらしてくれるかもしれない。

うなぎの養殖は大変な仕事だが、成長株は株主がぼんやりしていても成長してくれる。素晴らしいじゃないか。

 

でも、あんまり高い値段で成長株を買うことは勧めない。成長株の、将来の成長を折り込みすぎてる株価は、ちょっとしたつまづきで床を突き破るほど下落する。

シラスウナギを買うときも気をつけないと。

あんまり高いシラスウナギじゃあ、頑張って育てても元が取れなくなってしまう。

 

 

 

【くら寿司】 うなぎの蒲焼(390g) 無添加だれ・山椒付き 65g/食 小分けパック (6食セット)

ジェイコム株大量誤発注事件とは

落とし物を届ける子供のイラスト(駅員)

 

1.本当に市場にお金が落ちていた話

「マーケットで「価格のゆがみ」ができてもすぐに解消される。確実に儲かるチャンスなんだから、最初に見つけた人がそのチャンスを使ってしまう。

道に76,000円が落ちていたら誰でも拾う。同じように、マーケットに落ちているお金もすぐに拾われる。

何万人もが注目する株式市場なんだからなおさらだ。個人が裁定取引で稼ごうと思っても難しいだろう。」

 

前回そんなことを書いた。書きながら、過去には本当に株式市場にお金が落ちていたことがあった事を思い出していた。

ジェイコム誤発注事件っていう話だ。

 

今日はそのことについて書きたい。

 

 

2.ジェイコム株大量誤発注事件とは

今から10年以上前の2005年12月8日、総合人材サービス会社である「ジェイコム」の株がマザーズに新規上場された。

新規上場された株というものは、一般的に値動きが激しくなる。まだその会社の評価が定まっていないため、とんでもない高値まで上昇したり、その後に急落したりする。

そんな激しい値動きを利用してお金を稼ごうというトレーダーも多く集まり、そのためにますます値動きが激しくなる。

 

ジェイコムの上場当日、みずほ証券の男性担当者がジェイコム株の「61万円1株売り」の注文をするつもりで「1円61万株売り」と誤ってコンピュータに入力してしまった。午前9時27分56秒のことである。

 

その時、ジェイコムの株価はまだ初値が付いていなかった。一株90万円くらいで値がきまりそうな雰囲気だったのだけど、61万株という大量の売り注文のため67万2,000円の初値が付いた。その直後にストップ安となり、57万2,000円に張り付いてしまった。

 

90万円程度で評価されていた株に、1円の値段で61万株もの売りが出されたのだ。ストップ安になるのは当然だ。

そのストップ安に驚いて手持ちの株を売ってしまった投資家がいる一方、誤発注だと見抜いた投資家が大量の買い注文を入れた。

 

1円で61万株の注文を出した担当者は誤発注に気付き、青ざめて注文を取り消そうとした。1分25秒後の午前9時29分21秒の事だ。

しかし、こういう時に限ってシステムトラブルが起こってしまったらしく、取り消しがうまく行かなかった。何度か取り消しを試みたが、やはりうまく行かなかった。

みずほ証券東京証券取引所に直接電話して注文を取り消すように依頼した。それでも注文は取り消されなかった。

 

みずほ証券は反対注文を出して、1円の売り注文を全部買い戻すことを決定した。その結果、9時43分には一時ストップ高である77.2万円にまで高騰した。

2005年12月8日午前9時27分56秒から9時43分までの15分間、市場にはお金が落ちていた。90万円ほどの株が57万2,000円で売られていたんだ。

お金を落としたのはみずほ証券。あわてて落としたお金を拾いに行ったけど、かなりの額のお金が既に拾われてしまっていた。

誤発注で出した61万株のうち、9万6,236株は既に買い取られていた。

 

この誤発注で、みずほ証券は407億円の損害を出したらしい。たった一度のミスで407億円が蒸発した。株取引は自己責任だ。てへぺろ、では許してもらえない。

参考:ジェイコム株大量誤発注事件 - Wikipedia

 

 

3.落ちていたお金を拾った人たち/拾えなかった自分

ジェイコム株のストップ安からストップ高まで、その価格差は1株20万円だ。

 それを数千の単位で取引して、数億円から数十億円の利益を上げた個人投資家もいる。

ああ、羨ましい。俺もその場所に居合わせていれば・・。

 

しかし運良く自分がその場に居合わせても、数億円のお金は拾うことができなかった。この事はよく理解しておく必要がある。

誤発注によるストップ安とは言え、一株57万2,000円だ。1,000株買うためには5億7,200万円必要だ。1,000株買えば2億円儲かるが、当時の私にジェイコム株を1,000株買う資金はなかった。

そして現在の私にも、そこまでのお金はない。

 

 

4.ジェイコム誤発注事件の教訓とは

再びジェイコム誤発注事件と同じような事がが起こる可能性は、ゼロではない。

でも、そこでお金を稼ぐことができる可能性は、限りなくゼロに近いだろう。事件から10年以上経過し、誤発注を防ぐシステムも発達したはずだ。だから、同じことを期待して市場をさまようのは効率が悪すぎる。

そんな幸運に頼らなくても、株式市場でお金をかせぐ事はできる。

 

では、ジェイコム誤発注事件に学ぶことがあるとすれば何か。

やはりこれに尽きるのではないか。

 

「お金を拾うだけの簡単な仕事でも、元手が少なければ稼げない。

 だから頑張って種銭を集めよう」

「誤発注には気をつけよう。個人がお金を落としたら、それは二度と戻ってこない」

 

これからも頑張っていきたい。

いつの日か、数億円のお金を拾うことができるようになる日まで。 

 

 

↓ ジェイコム誤発注事件で6億円稼いだと言われるCISさんの本です。

  トレーダーなら必読です。

 

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

「せどり」と「価格のゆがみ」と「投資戦略」

 

フリーマーケットのイラスト

1.地域あたりのせどりプレイヤー

前回、せどり裁定取引について書いた。

ブックオフに落ちているお金を拾いに行く」のが、せどりの本質だ。安く売っているものを買って、高く売る。高く売れることを確認してから買うので、正しくやればほとんどリスクがない。

もちろんそんなに簡単な話では無いのだけど、うまくやれば確実にお金を稼ぐことができる。私は自分である程度の期間試してみた。だからこれは確信を持って言える。

 

 

しかし、高く売れる本を見つけるのはちょっと難しい。それなりに慣れないとうまくいかない。

そして、競合する「せどらー」が先に入っていると厳しい。先行した「せどらー」の商品をみる目が確かであれば、その古本屋にはもう高く売れる本が残っていない。根こそぎ買い取られてしまっている。そのあたりは、きのこ狩りと近いものがある。先行者が入った山には獲物が残されていないのだ。

 

古本屋には常に新しい古本が入荷する。だから根こそぎやられたブックオフにも、しばらく期間をおけば再び高く売れる本が並べられるようになる。特に引越しシーズンは狙い目だ。引っ越し前には荷物を減らすのが常道だ。要らないと判断された本がブックオフに持ち込まれる。そうなればまた「お金を拾う」チャンスが産まれてくるんだ。このあたりもきのこ狩りのようだ。

いずれにしても、同一地域にあまりにもたくさんのせどらーが居るのはやりにくい。単位時間あたりに見つかる「お宝本」が、競合のせどらーによってどんどん少なくなってしまう。せどらーがたくさんいるところでは、落ちているお金はあっという間に拾われる。そうやって、古本の「価格のゆがみ」はすぐに訂正されてしまう。

 

 

2.株価のゆがみを探せ!

株式市場とは、何万人ものせどらーがいる場所だ。ネット上で常に株価が公開されているし、どこからでも取引できる。古本屋のような地域的な障害は存在しない。

だから前回あげた例である、「札幌証券取引所東京証券取引所での価格差を利用した裁定取引」は不可能だ。皆さんがそんな美味しい話が目の前に落ちているような状況に出くわすことは無い。落とされたお金は、次の瞬間に見つけた人に拾われているんだ。少なくとも素人がそれを狙うのは無理だと思っていい。

 

せどりのような分かりやすい価格のゆがみはすぐに解消される。でも、価格のゆがみが分かりにくかったらどうだろう?

例えば、東証一部上場企業とマザーズ上場企業の価格のゆがみは?

 

100億円の資本を持ち、今後10年間毎年10億円ずつ稼ぐ企業があったとする。この企業が東証一部に上場していようと、マザーズに上場していようと、稼ぐ力や持つ資本はおんなじだ。同じ企業なんだから、同じ値段がつくのが当たり前だと思う。

でも東証一部上場企業とマザーズ上場企業なら、東証一部上場企業の方が「上だ」と感じる人は多いんじゃないだろうか。

 

信用があるからとか、資金が集まりやすいとか、インデックスファンドが買うからとか。

いろいろ理由があるのはよく知っているつもりだけど、同じ企業なら一部上場もマザーズ上場も同じ値段が付くはずだ。それなら一方が高くて一方が安いのは「株価のゆがみ」だと考えていいだろう。

 

実際、この価格のゆがみを利用した投資方法がある。コバンザメ投資法というやつだ。コバンザメ投資法については以前書いた。 

 しかし、上の記事で検証したように、零和の世の中ではコバンザメ投資法は機能しなくなっている。

 

 

 3.価格のゆがみを利用した投資方法は、いつか消えていく

コバンザメ投資法は現在では通用しない。

しかし、2000年頃には間違いなく通用していた。

 

通用しなくなった理由は、その価格のゆがみに気付く人が多くなったからだ。価格のゆがみに気付いた人は、それを利用することによってお金を稼ぐ。価格のゆがみは、利用されることによって消滅する。

ゆがみを作る方だったインデックスファンドのマネージャー達も、利用されて見知らぬ人にお金をばらまいている事に気付く。そうなるとゆがみを作らない方向に仕事のやり方を変える。

 

ひとつの地域のせどらーが増えることで、せどりのうま味はなくなる。

同じ戦略を使った投資家が増えると、その戦略のうま味はなくなる。

 そうやって価格のゆがみはなくなる。投資戦略は機能しなくなり、忘れ去られていく。

 

それでも、価格のゆがみは投資の儲けの源泉なんだ。

いつか通用しなくなる戦略かもしれないが、通用しなくなるまでは十分に稼ぐことができるだろう。

 

 しばらくこの話、続きます。